Mark Thoma, “Paul Krugman: The Obama Boom“, (Monday, January 11, 2016)
“然り、共和党に支配的な主流保守経済学説の、極めて甚だしい誤謬である”:
オバマブーム: ポール・クルーグマンの論考 (ニューヨークタイムズ): 誰か 『ブッシュブーム』 のことを覚えている方はいるだろうか? 恐らくいまい。何れにせよ、ジョージ・W・ブッシュ政権の任期は不況と伴に始まり、長い 『雇用無き回復』 がこれに続いた。それでも2003年の夏までには米国経済にも再び雇用の増加がみられ始めていたが、雇用創出のペースは特に目を見張るべきものではなかった…、だが保守勢力はこの雇用増加が…『ブッシュ減税』 の正しさを証明する大躍進に他ならないと主張して譲らなかったのである。
さて、我々はオバマが達成した雇用創出記録を何とすべきか? 民間部門の雇用状況が…最低点を記録したのは2010年の2月である。それ以降、我々は1400万もの雇用を獲得してきたのだが…これは 『ブッシュブーム』 が在ったとされる期間にみられた雇用増加のおよそ2倍に当たる数字である…
重要な点…そしてMr.オバマは…その大統領期間のあらゆる場面で、批判者の評するところ 『雇用を殺す』 政策を取ったとの廉で攻撃されてきたのである…
一体、Mr.オバマの行った何が雇用を殺すと言われていたのだろうか? …2010年ドッド=フランク金融規制改革法案に署名…高所得への増税…また医療保険制度改革案の制定も行った…
けれどもこういった政策が引き起こすと喧伝されていた惨禍は、1つとして現実化していない…
さて、この印象的な失敗の懈怠から我々は何を学ぶべきか? 然り、共和党に支配的な主流保守経済学説の、極めて甚だしい誤謬である。これは或る意味既に明らかだったといえよう…
一方では、この [大企業・個人の富裕層といった] エリート達は経済領域におけるスーパーヒーロー集団であるとされる。市場という摩訶不思議な力を用いて全面的な経済繁栄をもたらす能力者という訳だ。しかし他方で彼らは、恰も一輪の花のような、信じ難いほど繊細可憐な存在としても描き出される。逆境に陥ると枯れ萎んでしまうのだ – 例えば租税負担を僅かにでも増額したり、ほんの幾つか規制を課したり、1つ2つの演説中にこういった問題との連関で彼らの機嫌を損ねるような事をしようものなら、エリート達は雇用創出への取組みをほっぽり出して、自らのテントに – 実際は大邸宅といったところだろうが – お籠りになってしまうという。
正しいとはあまり思えないが…エリート達には極めて便利な教義が存在する: 曰く、不公平は自然の摂理である、社会の不平等を減じたり、一般家庭を金融危機から守ったりしようとする取組みなどには一切手を染めない方が身の為である、何故なら、もしそんな事をすれば我々は 『見えざる手』 から厳しく罰されることとなり、そしてその結果、経済破綻をみる定めとなろうから。…
オバマ…経済は力強い教訓となった…保守勢力から見れば、Mr.オバマは全く罰当たりな行いしかしていない、つまり安楽に暮らす者に (僅かに) 困窮を、困窮に喘ぐ者に (大いに) 安楽を与えるものと映ったはずだが、それで何か悪い事が起きたかといえば、起きなかったのである。いまや次のことが明らかとなった。そう、結局のところ、我々はこの社会を良くしてゆくことが出来るのだ。