●Lars Christensen, “Taxes and the liquidity trap”(The Market Monetarist, November 7, 2011)
名目金利が極めて低い今のような状況では、金融政策は一切無効だ。マネタリーベースをいくら増やしても、民間の銀行が準備預金をそのまま積み増すだけで、家計や企業への貸し出しが増えないからだ。
これまでに何度となく耳にしたことがある主張であり、私もその一員であるマーケット・マネタリスト陣営からすると、ナンセンスな主張だ。機会があるたびにそのナンセンスさ(馬鹿らしさ)を説明しようと試みてきたが、どうやらあまり耳を傾けてはもらえていないようだ。
耳を傾けてもらうために、こんな論法を使ってみたらどうだろう? 名目金利が極めて低くても金融政策は有効なことをどうしても受け入れたがらない人がいたら、次のように尋ねてみるのだ。「マネタリーベースをいくら増やしても、名目GDPが一向に増えないとしたら、税金なんて要らなくなるんじゃないでしょうかね?」。
つまりは、こういうことだ。「流動性の罠」に嵌っていて金融政策は無効という言い分が正しいようなら、フリーランチ(ただ飯)を手にする機会が目の前に転がっていることになる。政府支出(歳出)を賄うために税金を徴収するのはやめにして、中央銀行が新規に発行した貨幣で政府支出を全額賄えばいい [1] 訳注;無税国家の誕生。――。「流動性の罠」に嵌っていて金融政策は無効という言い分が正しいようなら、そこまでしてもインフレは起きないはずだ。
税金はなくして、新規に発行された貨幣で政府支出を全額賄うという話を耳にした相手は、ひっくり返らんばかりに驚いて、次のように絶叫するのがお決まりのパターンだろう。「そんなことしたら、ハイパーインフレになるに決まってる!」。そんなセリフが相手の口から吐かれた瞬間に、勝負ありだ。「証明終わり(Q.E.D.)」って返事するといい。
(追記)政府支出を貨幣の新規発行で全額賄えと訴えたいわけじゃない。「流動性の罠」なんて無いのは百も承知なのだ [2] … Continue reading。