●Tyler Cowen, “Impressions from Treasury”(Marginal Revolution, November 6, 2009)
つい先日のことだが、財務省を訪れる機会があった。財務省から招待されて数名のブロガーと一緒に(財務長官を含めた)財務省の高官らと面と向かって話をしてきたのだ。その時の印象を箇条書きでまとめておくとしよう(その他の招待客の面々の感想はこちらを参照)。
1. 財務長官(当時)のティモシー・ガイトナー(Timothy Geithner)は大変スマートな人物で予想以上に概念的な思考がお得意のようだ。
2. 財務省の建物の廊下は長くてL字型になっているが、そのような構造になっていることで廊下で立ち話するよりも部屋に入って話そうという気になりやすいんじゃないかと思う。何となくそう思うに過ぎないが、同意してくれる声もあれば異を唱える声もあることだろう。
3. 財務省の建物の内部には歴代の財務長官の肖像画が飾られているが、その絵の質は時とともに低下していっているようだ。
4. クッキー(温かくてとろけるチョコ入り)が振る舞われたのだが、出来立てでおいしかった。水も用意されていたが、ミネラルウォーターは置かれてなかった。
5. 部外者を招いて意見を聞くのは珍しくないとのことだが、高官のうちの何人かは我々のような外部の人間にどういう印象を持たれているのか(くそったれと思われているのかどうか)聞きたがっていたんだと思う。実際聞いてきたしね。
6. 招待された他のブロガーの中にはアメリカ経済が今後直面するかもしれない問題に財務省が気付いているかどうか心配な様子の御仁もいたが、その点については私はその御仁らほどには心配していない。行政機関の中では財務省は国家財政の未来についてであれ(金融機関が絡むケースも含めて)最悪のシナリオが発生する可能性についてであれ敏感であろうとするインセンティブを強く持っている。債券市場(国債市場)と日々向き合わねばならないことも一因となってその他の大半の行政機関よりも長期的で市場に友好的な視点に立ってものを考える傾向にある。問題があるとすればそれは議会だ。仮に財務省の中に(その他の招待客の一人である)イブ・スミス(Yves Smith)と同じような銀行システム観の持ち主がいたとしたら、銀行システムに対する財務省の関与も現状よりも控え目なものとなっていたことだろう。
7. 「あなた方とお話させていただくというのは格好の気分転換になります」。財務省の高官の一人がそんな感じのセリフを口にしたものだ。その他の場面でお世辞を並べられることはあったものの、「格好の気分転換になる」という発言はお世辞ではなくて本心だったんだと思う。こちらにとっても格好の気分転換になったものだ。
8. 金融危機について自分なりの考えをまとめる上で一番影響を受けた本なり人物(知識人ないしは経済理論家)なりを挙げるとすればどうなりますか? 高官の一人にそう尋ねたものだ。その後に続いた会話の中でその人物から(ライアカット・アハメドの)『Lords of Finance』〔拙訳はこちら〕をお薦めされたのだが、私の質問への回答のつもりだったのかどうかは不明だ。
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