Paul Krugman, “Shipping Delays Prove That Sometimes a Glitch Is Just a Glitch,” Krugman & Co., January 3, 2014.
配送遅延は技術問題がただの技術問題だという証明
by ポール・クルーグマン
ことの顛末はみなさんご存じのとおり.彼らは太鼓判を押した:「ウェブサイトにいって情報を提供していただくだけ,あとは万事うまくいきます」.実際に起きたことは,まるっきりちがってた.
たしかに多くの人は,いやおそらく大半の人は,最終的に望んだものを手に入れることができた.でも,何百万という人たちがいらだちを怒りを覚えている.
これって災害じゃないの? その答えは,選別して強調する逸話しだいで変わる.
長期的な影響はあるの? 答えるにはまだ時期尚早だ.
そうだね,2013年のオンラインショッピング大混乱は,実物教育になってくれた.おっと,失敬―― Healthcare.gov の話だと思ってたりした?
さて,初耳だという人にお話しておくと,このクリスマス休暇に,オンライン・ショッピングで問題が多発したんだ.たとえばアマゾンは保証されていたはずの配送期日をたくさん守れなかった――その結果,トナカイが出立しようってときになっても,その場にそろっていたクリスマス・プレゼントはほんのわずかしかなかった.最大のボトルネックは,UPS だったようだ.単純に,十分な配送能力を提供していなかったというのもある.でも,それだけが理由じゃない.民間部門って,なんだって正しくやれるんじゃなかったの?
そりゃまあ,起こるときには起こるってことくらいみんな知ってる.ときにうまくいかないことがあるのも重々承知してる――とくに,新しいことに取り組むときにはなおさらだ.たとえば,オンラインショッピングの急増とかね.でも,評論家のアレク・マクギリスが先日『ニューリパブリック』で解説してるように,多くの評論家たちは HealCare.gov の問題は,政府の根本的かつ改善不可能な無能力の証拠であり,適正価格医療保険法 (Affordable Care Act) が必ず崩壊に終わる予兆でもあると言い放った.奇妙なことに,そう言った連中の誰一人として,UPS や アマゾンについて同じような主張を述べていない.
なんでじゃろかのう.
© The New York Times News Service
【バックストーリー】ここではクルーグマンのコラムが書かれた背景をショーン・トレイナー記者が説明する
お買い物騒動
by ショーン・トレイナー
アメリカのオンライン小売業は,クリスマス前を前にした年内最後の買い物で,かつてない売り上げ増を経験した.小包の量が増えすぎたあまりに,配達サービスの能力を超えてしまって,クリスマス休みに注文の品が受け取れなかった注文客が大勢でた.
Amazon.com のようなウェブサイトは,伝統的な小売り販路から顧客を引き寄せる宣伝文句の一環として,一定の期日までに注文すればクリスマスまでの配達を保証していることがよくある.11月の感謝祭からクリスマスにかけての数週間は,たいていの小売店と運送会社にとっていちばん忙しい期間になる.そこで,どちらも土壇場で物流量が跳ね上がるのにそなえて計画を立てる.ところが,今年の売り上げ増は予想をこえてしまった.おそらく,例年より短い買い物シーズンになったことと,全米の多くで12月に荒れ模様の気象となったことで,アメリカ人は買い物を先延ばしにして,オンラインで買い物することにしたためだろう.
オンラインの大企業アマゾンの代表は,配送遅れを謝罪し,遅れについて運送会社を非難しつつ,影響を受けた顧客に20ドルのギフトカードを申し出た.運送会社 UPS の説明によれば,「当社のシステムで扱った航空便の物量が当社ネットワークの能力を超過した」そうだ.
数名の評論家は,この配送問題を,連邦政府のオンライン健康保険市場 Healthcare.gov の立ち上げ問題と比べている.『ニューリパブリック』で,評論家アレックス・マクギリスは,政府に向けられた批判をあらためて考察している.「みんなが声を揃えて,こう言っていた――想像してみろよ,ものの分からない旧弊な官僚のかわりにアマゾンやグーグルみたいな大企業が〔Healthhcare.govの〕ウェブサイト運営を行っていたらこうなるか?」とマクギリスはオンラインの記事で述べている.「2013年クリスマス大遅延は,大挙して声高に民間部門を礼賛していた人たちに,少しばかり大局観と謙虚さを注入してくれるはずだ.実のところ,陳腐な決まり文句は正しいわけだ:人生は複雑で,厄介事は起こるものだし,計画通りに進まないことだってある」
© The New York Times News Service