アラバマ州の郡保安官が、囚人の食費予算を使って住宅を購入した。一週間前にこの新聞見出しを見かけた時には、「またホワイトカラーのありきたりな不祥事ネタか」と思って受け流した。その後の展開に促されて、昨日になってもっと調べてみた。実情は、想像していたのよりもずっとひどかった。保安官がやったことは、完璧に合法なんだそうだ。
アラバマでは、大恐慌時代の法律で保安官は囚人の食費予算で使われなかった分を「そのまま保持しておく」ことができる。アラバマ州のいたるところで、保安官たちは余剰分を個人所得にしている――ただ、不足が生じた場合には、その差額を自分で埋め合わせる責任もある。
アラバマ州エトワ郡の保安官トッド・エンターキンは本紙の取材にこう答えた。彼は予算から余剰金をもらう慣例にしたがっており、「法律ではこれは個人の会計ということになっていて、これまでずっとそうしてきた」のだという。
アラバマ州の保安官たちはもう何十年も同じことをやっている。だが、この慣例の規模は明らかでない:「州全土で保安官たちがどれだけの金額をもらっているのか、いまのところは不明である。大半の保安官は、州の財務開示書類でこれを所得として報告していないためである」と、南部人権センターは1月に記している。
どうかしてるのはこれだけじゃない。ひどいことはまだある。ジャーナリストのコナー・シーツによる報道の一次情報源はエンターキン保安官の芝刈り業者マット・コールズだった。コールズはその後逮捕されて、いまはエンターキン保安官の監督下で収監されている。
シーツによる最初の報道が伝えらえたのは2月18日のことだった。そして2月22日にコールズが逮捕された。アパートの住人からマリファナのにおいについて苦情を伝える匿名の通報があって、麻薬密売の容疑をかけられたのだ。
これまで逮捕歴のないコールズは、いま6件の容疑をかけられて身柄を確保されており、保釈金は55,000ドルだとシーツは報道している。コールズは留置されてエンターキンの監督下にある。
(…)郡保安官事務所は、コールズの件への関与を否定しており、彼の逮捕や容疑は保安官事務所によるものではないと述べている。麻薬密売以外の容疑は逮捕後に麻薬対策課によって付け加えられたものだが、麻薬対策課の捜査員は保安官事務所やFBI、その他の法執行機関から選抜された人員で構成されている。
付記:この件を聞いて、タイラーとぼくが『経済学原理』教科書の冒頭で使った事例を思い出す読者もいるかもしれない。有罪判決を下された罪人たちをオーストラリアに運んでいた船の18世紀の船長たちが対価を払われていた方式も、今日まで(1)アラバマで囚人の食費とよく似ている――その結果も、今回の一件と同じく予想通りのものだった。