タイラー・コーエン 「ロシアへの制裁の行き過ぎ」(2022年3月3日)

●Tyler Cowen, “Norway Chess cancels Alexander Grischuk”(Marginal Revolution, March 3, 2022)/【訳者による注記】227thday氏も同じ記事を訳されている。タイラー・コーエン「ロシアキャンセルカルチャーはどこまで許されるのか」(2022年3月1日)の後半部分の「ノルウェーチェス大会がロシア人選手を排除」がそれ。あわせてお読みいただけたら幸い。


アレクサンドル・グリシチューク(Alexander Grischuk)がノルウェーで開催予定のチェスのトーナメントへの出場を拒まれたらしい。ロシアによるウクライナ侵攻に批判的な見解を公にしているにもかかわらずだ。いまいちピンとこないという人にお伝えしておくと、グリシチュークは、ロシアの市民権の保持者だ。こんなのは到底正しいとは言えない。全くフェアじゃない。

出場を拒まれたのは、グリシチュークだけじゃない。詳しくはこちら(ただし、ドイツ語)を参照してもらいたいが、ロシア出身の他のプレイヤーたち――ネポムニャシチー、スヴィドラー、デュボフをはじめとした、ウクライナへの侵攻に異を唱えているその他の面々――もトーナメントに出れないのだ。むごすぎる。あまりに不公平だ。誤解がないように断っておくと、国際チェス連盟(FIDE)がロシアやベラルーシでのトーナメントの開催を見合わせる決定を下したが、それには大いに賛成だ。しかし、個人を標的にするのには反対だ。

似たような話は他にもある。例えば、こんなメールがきた。

『哲学史研究』(“Studies in the History of Philosophy”)では、ロシアの宗教哲学の特集号の発行中止が決まったとのこと。

ロシアにいる猫がキャットショーの国際大会に出れなくなったという話まであるようだ。

ロシア出身で、ちょうど今アメリカで働いている最中という人がいたら、その人がこの国で大出世できる可能性は小さくなる一方と見ていいだろう。その人がどんな政治的な見解の持ち主だろうともね。チェコフがエンタープライズ号の船長に抜擢される見込みはないのだ。少なくとも今のような状況ではね。

ロシアのオリガルヒ〔ロシアの政権との結び付きが強い新興財閥〕についてはどうかというと、法を犯しているというのであれば、裁判を起こせばいい。どこぞの国の法廷であれ、ハーグの国際司法裁判所であれ、引っ張り出せばいい。裁判で有罪となって、ヨットの没収が妥当な処分なのだというなら、とっとと没収すればいい。その一方で、適正な手続きも踏まずにヨットを没収するっていうのは、・・・おやめいただきたいね。

Total
7
Shares

コメントを残す

Related Posts