Chartbook #140: China-Taiwan-Pelosi special
Posted by Adam Tooze
サーバーダウンしたウェイボー
ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問は、中国版ツイッターであるウェイボー(微博)を一時的にサーバーダウンに追い込んだ。ウェイボーで、数百万もの中国人が、彼女のアジア歴訪を巡って議論を交わしたのだ。ペロシの乗った飛行機をリアルタイムで追跡しながら数え切れないやり取りが交わされたことで、ペロシが台湾に到着する8月2日火曜日午後10時40分の直前になって、ウェイボーのアプリはクラッシュし、運営会社はアプリの30分間の停止を謝罪することになった。
出典:ブルームバーグ
なぜペロシは台湾に向かうのか?
私が見たところ、その背景の解説として、以下の3つの記事が特に優れている。
ポリティコ紙のアンドリュー・デシデリオによる「進歩的なタカ派」の誕生についての記事だ。
フィナンシャル・タイムズ紙による、合衆国憲法の観点からの記事である。
「ペロシは、中国の圧力に屈してこなかった長年の実績があり、〔立法府である〕合衆国議会は、行政府と対等な部門であるとの原則の遵守に熱意を捧げている人物だ」とハスは述べた。
1996年以降、中国による台湾周辺での軍事演習の範囲は、大幅に拡大している。
景気後退
ハル・ブランズは6月、中国の台湾侵攻によって経済的打撃が生じれば、ウクライナ情勢によって生じた混乱に、テイラー・スウィフトのジェット機[1] … Continue readingに乗ったような気分を兼ね合わせたようなものになるだろうと書いている。
ブルームバーグ通信
これはあまりにも当たり前の事実だ!
海運
中国の軍事演習は、1990年代を比べてはるかに大規模な範囲で行われているだけに留まらず、世界で最も海運量が多い海路で実施されている。
アメリカの国債市場への影響
ブルームバーグ通信のジョン・オーサーズのいつもながらの素晴らしい論考だ。
アメリカでは、インフレの終焉が不確かであるにもかかわらず、国債金利がここ数週間で急激に低下している。そして、火曜日にはブーメランのように上昇する異常な取引が行われた。ナンシー・ペロシ下院議長による台湾への急訪問での政治的主役のアピールも要因となり、1日単位での10年物国債の金利上昇は、コロナウイルスによってロックダウンが行われた最初の2日間と、FRBが次の会合で75ベーシスポイントの利上げの意向を漏らした6月の月曜日を除けば、最大の上昇を示した。
ブルームバーグ通信
中国の株式市場
中国の民族主義者らはウェイボーで暴発したが、中国の株式市場は戦争の危機を織り込んでいないようだ。
中国は不況に陥るのだろうか?
台湾での懸念とはまったく別に、中国経済の見通しは非常に厳しい。
中国では、不動産セクターが危機に陥っているが、このことで主に被害を受けている産業の一つが鉄鋼業だ。中国の鉄鋼業は、2000年代から目覚ましい産業革命を遂げたが、今、この産業は深刻に問題に直面している。
〔中国メディア〕財新は以下のように報じている。
悪化する不動産危機によって、鉄鋼業は需要が不安定となっており、北京政府による建設業主導による成長モデルの維持が困難となっているようだ。鉄鋼業は新時代に突入しつつある。河北敬業集団有限責任公司の創業者で会長の李雁波は、5年は続くであろう需要の縮小によって、中国の製鉄所の約1/3が倒産する恐れがあると警告した。河北敬業集団有限責任公司の会合では、「鉄鋼業セクター全体が赤字となっており、現段階では好転材料は見えない」と李雁波が語ったと、ブルームバーグ通信は報じている。
出典:財新
台湾の堅調な経済成長
北京政府にとって不動産と鉄鋼が重要な政策課題となっているとすれば、台湾が鍵となっている米中の主戦場は、マイクロチップである。
取り沙汰されていないが、財新の報道によると、バイデン政権は、中国へのマイクロチップの部品輸出禁止措置の適応範囲を、10nmから、より一般的に使用されてる14nmまで拡大しており、中国のマイクロチップ部門への規制を少しずつ強化していっている。
マイクロチップの取り締まり
北京政府は、マイクロチップ産業に関わる党幹部や官僚に対して、激しい一斉検挙を実施している。一連の捜査が、〔中国の半導体メーカー〕清華紫光集団の幹部を対象におこなれた。財紙は以下のように報じている。
中国最大の半導体投資ファンドのトップが、一連の汚職事件で最新の捜査を受けており、この国営ファンドを揺るがしている。中国集積回路産業投資ファンド(China Integrated Circuit Industry Investment Fund)のトップである、丁文宇は、当局の捜査を受け、連絡が取れない状態だと、この件に詳しい複数の関係者が財新の取材に語った。このファンドは「巨大ファンド」として知られており、技術の輸入依存を減らすのを目的に、国産の集積回路産業を発展させようとする中国政府による重要政策の一翼を担っている。
財新:中国トップニュース
中国の半導体コングロマリットである清華紫光集団は、負債を抱え破産更生手続を申請しているが、さらに2人の幹部が捜査の対象となっている。
財新
不足から供給過剰へ
現在、台湾経済は劇的な回復基調にある。中国よりも非常に低い数値だが、2022年第2四半期まで堅調な経済成長を続けている。
しかし、中国経済の減速を考慮に入れると、台湾の堅調は成長は、台湾にとって非常に悪いニュースだ。
台湾にとって、アメリカと中国本土は2大輸出市場であり、合計で海外輸出の半分以上を占めている。アメリカでは景気後退が叫ばれており、過去40年で最も高いインフレ率を景気後退を招かずに抑制しようと、政府当局者らは苦闘している。一方、中国経済は、コロナウイルスの感染拡大と、それに伴う感染地域のロックダウンが重荷となり、最近のブルームバーグ通信のサーベイでは、エコノミスト達は、中国の経済成長予測を3.9%に下方修正した。
台湾経済の輸出主導での成長は終焉に近づいている。
台湾と韓国の株式市場は、マイクロチップの需要がこの先の低迷を織り込んでいる。
経済の行く末は?
2022年後半には、ヨーロッパと東アジアも深刻な景気後退とデフレ圧力に悩まられる可能性がある。
References
↑1 | 訳注:地球温暖化に反対するセレブであるテイラー・スウィフトが、どの有名人より大量にプライベートジェットを使用して二酸化炭素を排出していることを揶揄した記事に基づいている。 |
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