(イギリスの)ロンドン、(フランスの)パリ、(アルゼンチンの)ブエノスアイレスの三強というのが私の意見だ。ニューヨーク市は馴染みがありすぎて客観的な判断ができないので、除外するとしよう。
治安がそこそこ良くて安全というのは言わずもがなの前提として、以下の条件が判断基準になっている。
- インパクトがでかいのに、そこまで有名じゃない建築物に出くわせる:ロンドン、パリ、ブエノスアイレスのいずれもが高得点。
- 広い並木道と細い路地のバランスがちょうどいい:同上。
- 品揃えがいい書店やおいしいダークチョコレートを売っているお店に出くわせる:書店についてはロンドンの勝ち、ダークチョコレートについてはパリとブエノスアイレスの勝ち。
- タクシーが安くて便利。炭酸水を座って飲める場所がある:ブエノスアイレスの勝ち。
- 現地の見知らぬ人たちが気軽に話しかけてきてくれる:どこが一番かを決めるのは難しい。ニューヨーク市も入れていいなら、ニューヨーク市の圧勝だろう。
- 歴史を感じさせるプレートが戦略的にちょこちょこ使われている:ロンドンの勝ち。昨日もロンドンを歩いていて、「ここは、ジョージ・カニング元首相がお住まいになっていた家です」だとか「ここは、インドのクライヴ(ことロバート・クライヴ男爵)がお住まいになっていた家です」だとかって書かれたプレートを目にしたばかりだ。
ブエノスアイレスは、三つの都市の中で飛び抜けて暖かい都市だが、安全面に些(いささ)か問題があるのと、資産が没収されるおそれがあるのがマイナス点だ。あえて順位をつけるなら、ロンドンが総合的に一位だろうかね。本屋絡みでいうと、フランス語よりは英語の方が好きだからね。 パリは、「美」の平均レベルでいうと三つの都市の中で一位だが、驚きは少ない。屋外でピクニック気分で食事をするなら、パリにはそのための食料品店が(三つの都市の中で)断トツで揃っているが、安いレストランに出くわせるチャンスとなると、パリが(三つの都市の中で)最下位だ。(ドイツの)ベルリンは住むなら一番快適な都市だろうが、歩くには広がりがあり過ぎる。広い並木道が多すぎる。ベルリンは、タクシーに乗って見学するなら言うことない都市だろう。
歩く魅力が増している最中の都市:(トルコの)イスタンブール。ずっと前から素敵な都市だったのかもしれないが、ここにきてそのモダンさの魅力が高まってきているようだ。
歩く魅力が過小評価されている都市:(ロシアの)モスクワ、メキシコシティ、(カナダの)トロント、イングランド北部の一部の都市、(アメリカの)ロサンゼルス。
歩く魅力が過大評価されている都市:(ハンガリーの)ブダペスト、(ポーランドの)クラクフ、(ドイツの)ミュンヘン。
地下鉄で巡るなら言うことない都市:東京。
ロンドン、パリ、ブエノスアイレスに次ぐ都市(第四位の都市)をあえて選ぶなら、(スペインの)バルセロナ。
〔原文:“Which are the best walking cities?”(Marginal Revolution, June 7, 2012)〕