アレク・スタップ(Alec Stapp)が指摘しているように、NATO(北大西洋条約機構)加盟国のうちでアメリカと自由貿易協定を結んでいるのはカナダだけだ。よくよく考えると、だいぶ驚くべきことだ。NATOの加盟国は、集団防衛を誓い合い、協調的安全保障を約束し合い、民主主義の原則を守り抜くために連携し合っている。そのように固く結ばれているにもかかわらず、アメリカはNATOに加盟しているあれやこれやの国(フランス、ドイツ、イギリス、デンマーク、ポルトガル、スペイン)からの輸入品に対して、依然として関税や輸入割当を課している。結婚しているのに、夫婦共用の銀行口座を作っていないようなものだ。軍事面でこれほど深い仲になれるのであれば、自由に貿易し合うのに意気投合できないわけなんてないんじゃなかろうか?
自由貿易は、お互いの経済基盤を強化する役目を果たしてくれる。自由貿易も防衛力(自衛力)を支える戦略資産の一つと見なすべきなのだ。「豊かさ」と「安全」の一挙両得を目指そうじゃないか。
防衛協定を結んでいない国とも自由貿易協定を結ぶべきだが――そうすべき理由はたくさんある――、自由な国々と自由に貿易し合うというのは、クリアして(乗り越えて)当然の最低ラインだろう。その最低ラインをクリアできていないのは、アメリカだけじゃない。NATOに加盟している他の国に関しても、お互いに自由貿易協定を結んでいない組み合わせがあるのだ。北大西洋貿易機構(North-Atlantic Trade Organization)を作るっていうのはどうだろう? 略してNATOって呼ぶのもありだ。
〔原文:“Free Trade with Free Nations”(Marginal Revolution, May 14, 2024)〕