
誰かが狂った王を止めないといけない.
とんでもなく高いトランプ関税がしばらく撤回されそうもないと投資家たちが認識して,アメリカの株式市場が急落を続けている:
アメリカ株式先物は日曜日の夕方に下落した.ドナルド・トランプ大統領が主要な貿易相手国のほぼすべてに対して驚異的なまでに高い関税率を発表した後に2日続けて史上最大規模の株式市場暴落後も,ホワイトハウスは強気な姿勢を崩していない.(…)ダウ工業株30種平均先物は,日曜の夕方に 1,531ポイント(4%)下落し,続いて月曜にも厳しい取り引きが続く見込み.S&P500先物は 4%下落.ナスダック100先物は 4%の損失となった.
S&P 500先物は,3回の取り引きセッションで 15% も下落した.もはや「暴落」と行っても言い過ぎじゃない.たった数日で,ドナルド・トランプの政策はすでに 5兆ドル以上もアメリカ人の富を雲散霧消させてみせた.月曜日の市場が予想どおりの展開になったら,その数字はすぐさま10兆ドルになっておかしくない.たった3日で,このザマだ.「関税は一時的なものに終わる」と予想する投資家はいまだに多い:

ということは,すでにぼくらが経験した暴落ですら,まだ序章にすぎないかもしれないわけだ.
ごく当然な反応として,アメリカの市民たちはこの理不尽な経済破壊にうろたえている.関税を支持する人たちの割合はこれまでも 50% を超えていなかったけれど,いまやすっかり地に落ちている.アメリカ人がトランプに関してとりわけ不支持と回答する問題といえば外交だったけれど,いまや経済・雇用・国際貿易もそこに加わってる:

アメリカ政府の経済政策に関する否定的な見方は急激に高まっていて,もう〔2008年金融危機に続いた〕大不況の頃よりも高い水準に達している:

こういう反応は株式市場だけじゃない.大半のアメリカ人は,関税が実体経済にマイナスの影響を及ぼすと予想している.つまり,失業率が高まり,所得が減少すると予想している:


民間の予想期間は,景気後退が差し迫っているとの見込みを強めている.予測市場も同意見だ.
一方,狂気の王トランプは,株式市場をガタガタにしてやったぜと意気揚々だ:

トランプの同盟者や支持者たちのなかにすら,血の気が引いている面々がでてきた.ビル・アックマンは「自ら引き起こした経済的な《核の冬》に我々は向かっている」と宣言し,イーロン・マスクはヨーロッパにゼロ関税自由貿易ゾーンをつくるよう求めている.さらに,マスクはトランプの経済顧問ピーター・ナヴァロを強く非難している.おそらくナヴァロが関税に関していちばん影響力の大きい提唱者だ.[n.2]
ここでぜひ思い出してほしい.議会は,いつでもこの狂気に介入して待ったをかけられるはずなんだ.関税を制定する権限は,憲法によって議会に留保されている.トランプが一方的に今回の関税をつくりだせている理由はひとつしかない.議会が一連の法律で大統領にそうする力を与えているからだ.いつでも,議会は新しく法律を可決してこの関税を消滅させられる.
実際,少なくともそういう法案が2件,いま提案されている――ひとつはチャック・グラスリーとマリア・キャントウェルによる上院での法案,もうひとつはドン・ベイコンによる下院での法案だ.すばらしいね! 可決してくれたらと願うけれど,トランプはたんに拒否権発動で応じるはずだ.いずれ,事態がますますひどくなってトランプ人気が下がっていけば,民主党と共和党が団結して拒否権を覆すのに必要な3分の2の多数派をつくって,この関税の悪夢に終止符を打つときが来てもおかしくない.
ただ,ここできっと読者はすぐに気づくと思うんだけど,関税反対を主導しているこの3人の議員たちのうち2人,つまりベイコンとグラスリーは共和党議員だ.民主党はと言うと,おおよそこの戦いの最前線に現れていない.
とはいえ,べつに民主党が完全に沈黙を続けてるわけじゃない.今回の関税に反対する声明を出している人たちは多い.たとえば,ナンシー・ペロシがそうだ:

トランプ政権の明らかな無能ぶりによって,アメリカ経済は自滅的な災厄に見舞われ,勤勉なアメリカ人が,その大きな痛みを押しつけられています.
見誤ってはなりません:トランプ大統領の無意味な関税によって,物価は押し上げられ,人々の退職貯金は失われ,私たちは不況の瀬戸際にまで追いやられているのです.
1988年,ロナルド・レーガン大統領はこう言いました.「私たちは,自分たちの友人に対して貿易戦争を宣言する構えを見せている扇動者たちに警戒すべきです――それは,私たちの経済,国家安全保障,ひいては自由世界全体を弱体化させてしまいます.しかも,シニカルにアメリカ国旗を振りかざしながら,そんなことを扇動しようという人々に用心しなくてはいけません.」
レーガン大統領の言葉は当時も事実でしたし,今日でも事実です.トランプ大統領と議会の我が共和党の同僚たちが,この知恵ある言葉に耳を傾けることを願います.
ただ,いまのところ,イーロン・マスクの DOGE を進歩派が攻撃したときのような烈火のごとき言辞は見当たらない.バーニー・サンダースは DOGE に対して「寡頭制を止めろ」という烈しいツアーをやって,大勢の群衆を集めた.ところが,関税に対してサンダースがとった対応は,慎重であいまいだった:
中国やメキシコなどの低賃金諸国との破滅的で歯止めのない自由貿易に反対する取り組みを先導した人物として,大企業の CEO たちだけでなくアメリカの労働者に恩恵をもたらす貿易政策が必要であることは理解しています.そうした政策には,起業がアメリカ人の雇用と工場を国外に移すのを阻止する強力なツールとなりうる対象を絞った関税が含まれます.
要点を申しましょう:我々には,合理的で熟慮された公平な貿易政策が必要なのです.トランプの全面的な関税は,なすべきやり方ではありません.アメリカの人々が切実に必要とする製品の値上がりにつながる輸入品への恣意的で十把一絡げの売上税は,必要ありません.とんでもない値上がりにつながることではなくて,物価を下げるためにできるあらゆる取り組みをすべきなのです.
ごく一握りではあるけれど,民主党議員のなかには,トランプ関税を弁護する一歩手前まで傾いている人たちすらいる.ペンシルベニア州選出のクリス・デルツィオ下院議員[n.3] は,トランプの政策の実施方法を批判する声明こそ出したけれど,その全体的なアプローチには賛同しているように見えるし,関税によって誘発されたインフレをしずめる方策として価格統制を求めている:
悪質な行為者や貿易詐欺師――共産主義中国など――に対抗するツールとして関税を用いるのに私は賛同します.強力な産業政策や労働者支援政策と合わせて戦略的に関税を用いてアメリカの雇用と消費者を守ることをを支持します.また,私たちのような西ペンシルベニアの勤勉なアメリカ人にとって最良の取引を得るために,USMCA のような貿易協定の積極的な再交渉を進めることを支持します.(…)自由貿易は,アメリカの産業と雇用を打ちのめし,あまりにも頻繁に途絶する遠く離れたサプライチェーンをもたらしました.そうした自由主義に関するワシントン合意を,私は支持しません.ラストベルトその他の地域に暮らす私たちにとって,これはひどい取引でした.また,外国の貿易詐欺師たちが自国の労働者たちを搾取してアメリカの雇用を奪うのをみすみす許すことを支持しません.(…)関税を隠れ蓑にして起業が価格をつり上げるのを止める権限が,大統領にはあります――なぜ,彼はその権限をふるおうとしないのでしょう?
下院の民主党議員たちは,デルジオが同様の声明を発表している動画をツイートし,さらにいくらか文言を加えた.その言葉からは,条件付きでトランプの全般的なアプローチを支持しているのがうかがえる:

下院民主党アカウント:本日の民主党「デイリー・ダウンロード」:ペンシルバニア州西部選出の@RepDeluzioです.
トランプの通商政策がいかに混乱した状態にあるかをデルジオ議員は説明しています.しかし,適切に実施され,強力な労働者支援と産業政策と組み合わせれば,関税は製造業を活性化させるのに利用できます.
私たちは,勤勉なアメリカ人家族と地域社会に力を与えるための本物の政策を提案しています.強欲な大富豪や巨大企業を税金で優遇するのをごまかすための偽物のポピュリズムではありません.
率直に言って,これは馬鹿げてる.トランプの意図的な壊滅的打撃はすでに株式市場を痛めつけ,じきにアメリカ経済も痛めつけるだろう.こんなことを故意にやってしまった大統領なんて前例がない.この100年間になされた政策の失敗を見渡しても,これに比類するのはイラク戦争くらいしかない.それに,あの惨事にしても,何年もかけて展開した.民主党は,あらゆる場でトランプを猛烈に非難し,前例のない怒りの波に乗って2026年中間選挙で完勝する絶好の機会を手にしている.それなのに,彼らはしょうもない声明を出して玉虫色のニュアンスに終始している.そうすることで,《狂った王》からアメリカの繁栄を守る主導権を共和党に握らせている.
いったいどうなってんだろう? 民主党が計算ずくで戦略的にこれをやっているんだとしたら――共和党を内部分裂させてからそこにつけこもうという腹づもりだとしたら――民主党はたんにペロシのような声明を出しそうなものだ.デルジオみたいに半ば関税を擁護しているような苦しげな声明は出さないだろう.ところが,いまどうなっているかと言えば,これまで何十年も進歩派が夢見てきたネオリベラリズムへの大反撃を,彼らではなくトランプが実施しつつある.それが惨憺たる大災厄になろうとしているとき,民主党はどうしていいやらわかりかねている.
トランプが関税を掲げているのは,実はいろんな点で政治的な反転だったりする.さまざまな貿易協定によってアメリカの労組加入労働者が弱体化されていき,アメリカの雇用が低賃金諸国に奪われ,環境がそこなわれるのを,何十年にもわたって民主党と労働系左派は懸念してきた.近年,自由貿易を主軸の一つにするネオリベラリズムこそがアメリカのさまざまな問題の核心にあると判断していたのは,進歩派だった.
「反ネオリベラリズム」は,現代の進歩派運動を束ねるアイディアだった.社会主義系の評論家たちは,とにかく自分たちの気に食わないものにはなんであれ「ネオリベラル」という単語を投げつけた.ルーズベルト研究所やヒューレット財団のような進歩派シンクタンクは,「ネオリベラリズムにとってかわるものはなにか」を考えている思想家たちやイベントに資金を提供していた(ぼくも,そういうイベントにいくつか行ってみたことがある).バイデン政権で大きな影響力をもっていた知識人エリートたちのプロジェクトのウォーレン運動は,独占禁止法・価格統制・労組支援強化などを主要な政策手段にして,この概念を具体的に実施していった.ジェイク・サリヴァンやジェニファー・ハリスといったもっと安全保障意識の強いリベラルたちは,産業政策にもっと関心を注いでいる(この点もぼくは強く支持してる).一方,政策に少しだけ影響は及ぼしたものの権力をとるには一度もいたっていないポピュリスト運動のサンダース運動は,さらに劇的な政策を求めている.たとえば,懲罰的なまでに高い税率や産業国有化といった政策だ.
関税や貿易赤字がこういうリストのどこにも目立って登場していない点に,きっと読者も気づいたんじゃないだろうか.反ネオリベラリズムはもちろん自由貿易に懐疑的だったし,バイデンは特定の中国製品を標的に絞って戦略的な関税をかけた.でも,関税は反ネオリベラリズム・イデオロギーで大きな部分をしめたためしがない.それに,アメリカが他国の食い物にされている証拠だといって貿易赤字を引き合いに出した進歩派もほぼいなかった.とびきり熱烈なバーニー支持者ですら,いまトランプが実施しようとしているほど強烈な貿易破壊には,きっと躊躇しただろう(バーニー本人はまちがいなく躊躇したはずだ).
でも,進歩派の反ネオリベラリズム運動がいわば低速レーンでちんたら進んでいたとすれば,トランプは改造車で一気に彼らを追い抜いてしまった.いまや,トランプは反ネオリベラリズムの旗印を奪い取って,かつての運動指導者たちが夢にも思わなかった方向へどんどん進めていっている.
いま,進歩派の指導者たちが恐れているのはこんなことだ――「もしも自由貿易の旗印を掲げてトランプと戦って,しかも勝利を収めたとしたら,関税もろとも自分たちの反ネオリベラル・プログラムがまるごと捨て去られてしまうんじゃないか.」 これは,もっともな恐れだとは思う.トランプの行動によって,すでにアメリカ人の大半は自由貿易を前よりもプラスに見るように変わっている.関税による経済への打撃が広まっていけば,それへの反発はかつてなく強烈になるだろう.

実際,いまぼくらが目のあたりにしているのは,一世代まるごとが自由貿易に揺り戻す動きなのかもしれない.そうなったら,一世代つづいた進歩派の反ネオリベラリズム・プロジェクトが危うくなっておかしくない.
この可能性に思い至った反ネオリベラリズム思想家・活動家たちは少しばかり動揺している.その結果,彼らは激しくどっちつかずの言動をしている:

ゼファー・ティーチャウト:トランプの破壊的な関税政策を,あたかもまっとうな関税政策であるかのように仕立てようとする動きがあります.嬉々としてやっているのかと思うほどの,間違いなく熱狂的な動きです.それが,金融階級の動きです.
彼らは,政策と政治に関して間違っています――大半の人々は,もうネオリベラリズムの超グローバル化にはうんざりしています.
2008年に反NAFTAを軸に戦ってオバマが勝利したのには,理由があります.それは,一世代前の損失です.最前線の議員たちが貿易と国内製造の新時代で主張して戦っているのには,理由があります.予備選挙でもっとも活発な有権者は極度の自由貿易支持者ですが,普通の有権者はちがいます.

デイヴィッド・シロタ:トランプ関税は労働者階級ばかりを痛めつけることでしょう.しかし,興味深いことに,エリートたちはあけすけに誇らしげにこう宣言しています――「アメリカ経済は,生産を海外に移転させ,アメリカ人労働者を権威主義国家の年季奉公人にとってかえるやり方にこのまま依存し続けるべきだ」と.
この道を選べば,進歩派運動にとって絶対的な失敗につながる.たんに,一生に一度あるかという権力獲得の機会を,例によって例のごとくみすみすふいにしてしまうだけじゃない(もちろん,これはこれで事実だけど).現代アメリカ史上でも最悪の経済自滅行為を明確に非難して反対するのを拒むことで,進歩派は民主党内のネオリベラリズム系のライバルたちに知的大勝利を手渡して,これから生まれようとしている革命を歴史のゴミ箱に投げ込んでしまう.
おそらく,進歩派のなかにはこう想像してる人たちがいる.「トランプが自滅したあとに民主党が権力を再奪取すればいい.そのときに,トランプ関税の一部は残しておこう.」 これには,前例もある――たとえば,バイデンはトランプ第一期の対中関税を維持した.進歩派たちは,自分にこう言い聞かせているかもしれない.「トランプは自分たちにかわって《オーバートンの窓》を動かしてくれている〔「まともだ」「容認できる」と受け止められるアイディアの範囲が,トランプのどうかしている行動によってシフトしている〕.あいつがいなくなったら,自分たちがそこから入り込んでいって,もっと穏当なバージョンの反ネオリベラリズムを妥協案として提示すればいい.」
そうはならないんじゃないかと,ぼくは強く疑ってる.第一期トランプ政権の関税が継続できたのはなぜかと言えば,大した打撃を与えなかったからだ.経済的に本当に苦しんでいるとき――たとえば2008年金融危機後みたいなときに――しばしばアメリカ人は「これが痛みの原因だ」と認識したものに対して徹底的な反対にまわる.金融危機の後には,アメリカ人は金融業界に反発して,その結果として第二次世界大戦いらいもっとも厳しい金融規制が敷かれた.エンロン社不正会計事件の後には,サーベンス=オクスリー法で企業会計の規制がはかられた.おそらくは,規制しすぎなほどに.いまトランプがやっているのよりはるかに小さな関税だったけれど,大きな関税を課したスムート=ホーリー関税法の後には,自由貿易は何世代にもわたって続くドグマになった.
こうしたことがすべて過ぎ去った後,「反ネオリベラリズム」は必ず関税を課すんだとアメリカ人が判断したなら,きっとアメリカ人はミルトン・フリードマンをまつった祠を庭先に建てる [n.4].産業政策・反トラスト・増税といったアイディアは関税と連想でつながって,まとめて放り捨てられるだろう.その頃の言論は,こんなことを言う人たちで溢れかえっているはずだ:

産業政策に熱を上げながら同時に関税に怒りを覚えてる人たちがこんなにいるのはどういうわけなんだ.お前ら,ちょっとは足りない頭を働かせろよ.
アメリカ人の声に耳を傾ける進歩派・民主党が,それでも自分たちのプロジェクトからなにがしかを救出したいとのぞむなら――このぼくも,救出されるべき大事な項目があるって点で同意見だ――もっといいアイディアをひねり出さないといけなくなる.つまり,「いや,まあ,正しく実施すれば関税はいいことなんだけど,このトランプ関税ばっかりはなんともお粗末な実施ぶりでねぇ」とかなんとか言うのよりもずっとマシなアイディアを考え出さないといけなくなる.
幸いにも,「ネオリベラリズム」その他のデカいイデオロギー概念を語らなくても,トランプ関税を全力で攻撃するのは容易に可能だ.関税はアメリカの労働者階級を激しく痛めつける.だから,ただそう言えばいい.関税はアメリカの脱工業化を大幅に加速して工場労働者を失業させてしまう.だから,ただそう言えばいい.関税は,中流階級を貧しくして,失業率を高め,退職貯蓄をつぶしてしまい,購買力をそぎ落としてしまう.だから,ただそう言えばいい.
「ネオリベラリズム」がどうとか,「エリート」がどうとか,「金融階級」がどうとか,その手の話になにもつなげなくていい.トランプ関税はダメだって話を,もっと広範なイデオロギー競争に組み込まなくていい.その手の思考は,議員たちの Twitter アカウントを担当している民主党スタッフみたいな階層には共感が得られるかもしれないけれど,一般の有権者には,「関税はダメ,だからトランプはダメ」というメッセージこそ必要で,それ以上のことはあまり必要じゃない.関税は,進歩派プログラムで大きな位置を占めていなかった――というか,フランクリン・D・ルーズベルトは1934年の通商協定法で関税を大幅に引き下げた.
あと,「産業政策と反トラストはいいぞ」って話もするといいね! かりに,頭のなかでは「ネオリベラリズム」に関するなんらかの理論でこの2つがつながっていたとしても,自分が物事を語るときにこの2つをつなげる必要はない.とにかく関税をやっつけるのが大事だ.アメリカ人にイデオロギーに関する講義をするのは勘弁してほしい.
また,民主党はこれを階級戦争ネタに仕立てようとするのをやめるべきだ.民主党のなかには,「関税で金持ちが恩恵を得る」なんてだらしない主張をしてる人たちがいる:

そんな話を真に受けるほどのバカはいない.お金持ちがたくさん株を保有してるのは誰だって知ってるし,株式市場がガタガタになってお金持ちが巨額の打撃をこうむったってことも知ってる.
民意を再び勝ち取ろうというとき,階級戦争を軸にするやり方が強い力を発揮したためしはない.まして,「億万長者 vs 他のみんな」という構図に関税問題を落とし込もうとするのはバカげてるというしかない.いまの状況は,経済学入門講義で教わる「パレート改善」そのまんまだ〔誰も損をしないまま少なくとも誰かは得をする状況にある〕.いま,アホな政策で億万長者たちも労働階級のアメリカ人庶民も痛手をこうむっている.船底に穴を開けようとしてる狂人を食い止めれば,まさしく「上げ潮がすべての船を持ち上げる」結果になる.
ようするに,民主党と進歩派は,狂った王とその関税の狂気に対する戦いで主導権を握る必要がある.関税が実行可能な経済・政治プログラムじゃないのは明らかだ.先頭に立ってこれを打ち負かした人たちが,次にアメリカの経済政策を率いる事実上のリーダーになる.その先陣になりなよ.
原註
[n.1] ちなみに,アメリカの貿易赤字で史上最大となった額でも1兆ドル未満だった.株式市場の暴落と貿易赤字を比較するべきまっとうな理由はない.なぜって,貿易赤字は,べつにアメリカの富が減少するわけじゃないからだ.ただ,かりにそんなことが起こるファンタジー世界があったとしても,トランプの株式市場暴落の方がそれよりもよほど大きいだろう.
[n.2] 「《影の大統領イーロン・マスク》説はもういいよ」って?
[n.3] なるほど「名前が運命を呼ぶ」って説が廃れないわけだね〔デルジオの名前が「妄想」の “delusion” と似た響きなのとひっかけている〕
[n.4] さすがにそれはない,といいな.
[Noah Smith, “Hey Democrats: Stop fiddling while Trump burns America,” April 7, 2025]