ノア・スミス「日本の観光客過剰に京都がとった冴えた解決法」(2025年11月8日)

日本にとって,観光客がいっそう問題になってきている.日本観光は増える一方で,日本に多大な収益をもたらしているけれど,京都と東京(人気1位2位の目的地)の都市インフラに巨大な負担をかけてもいる.ここまで大勢の人たちを道路も鉄道もさばけない.その一方で,アメリカその他の西洋諸国からやってくる多くの観光客たちは,お行儀がひどくて日本社会をピリピリさせている.観光客が押し寄せて人が過密になっているあまりに取り締まりもできないほどで,これが問題をさらに悪化させている.

とはいえ,観光をムリヤリ制限すると,長らく停滞している日本経済に必要な収益(と外貨収入)がなくなってしまう.というか,名古屋みたいに注目されずにいる多くの都市は,むしろもっと観光客を求めている.日本政府は外国人旅行者を京都と東京から他のそういう都市に誘導するためにいろんな策を講じてきた.ただ,その効果はといえば,すごくまちまちだ.

ところが,最近になって京都が実施した政策は,とりわけ優雅に効率よく観光客過剰に対処できそうだ.

観光客による混雑を緩和する必要に迫られている京都市は,一人あたり一泊ごとに上限1万円(68.3ドル)までの宿泊税を課す.3月1日から開始の予定.(…)当局の説明によれば,この1万円宿泊税は,1泊10万円以上の宿泊料に適用される.(…)改正後,宿泊税収は,今年度の 59.1億円から来年度には 126億円にまで倍近くに増える見込みだ.

これはピグー税だね! 京都市の混雑問題は外部性だ.そして,外部性があるときには,それに課税する必要がある.ホテル宿泊料〔にかける税〕を調整すれば,「観光客過剰をこれくらい減らしたい」という要望と「これくらい税収をあげたい」という要望のバランスをとることができる.

この政策に加える改良点は,すぐさまいくつか思い浮かぶ.第一に,日本の人たちも仕事で都市間を移動する.政府としては,これにまで課税しない方がいい.そこで,宿泊税をかけるのは,外国の銀行口座から予約された宿泊に限定するべきだ.

第二に,大阪に宿泊するとかんたんに京都に通えるので,宿泊税は広域で調整して実施する方がいい.

広域限定の宿泊税は,複数の目的をいっぺんに達成する:

  • 観光客過剰を抑制する
  • 地方自治体の税収を増やす
  • 観光による収益増を必要としている宿泊税のかからない都市に観光客たちを誘導する

これは,三つの問題を同時に解決する上に,短所はほとんどない.


[Noah Smith, “The obvious solution for Japan’s overtourism problem,” Noahpinion, November 8, 2025]
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