
1980年代~90年代サイバーパンクで描かれていた未来像が次から次へおおよそ実現する様を見ては愉快に思ってる.「さて,次に実現する未来像はなにかな」って思案を巡らすのも楽しい.ひとつの候補は,「ソーラーパンク」だ.ただ,いまのところ,その大半は美術的な趣向にすぎなくて,完全に肉付けされた未来像にはなっていない.シンガポールはビルに植物を生やしていてかっこいいけど,それ以外はごく標準的なサイバーパンク都市でしかない.
ところが,スカンダ・ガラムがこんな説得力ある主張をしている――「ソーラーパンクこそアフリカの未来だ.」 ちょうど,かつてサイバーパンクがアジアやアメリカ各地の未来だったのと同じように,ソーラーパンクがアフリカで実現すると彼は議論を展開している.
基本的に,アフリカ諸国家は弱くって,インフラ提供がうまくできていない.それで,太陽光発電がアフリカ大陸の電化を進めていっている.なぜって,太陽光発電なら分散方式で設備を建設できるからだ.それに,アフリカは太陽光にめぐまれている.おかげで,太陽光発電がとびきりうまく機能する.
スカンダの記事からちょっと抜粋しよう:
いまサハラ以南アフリカでなにが起きているかといえば,人類史上でもとりわけ野心にあふれたインフラ建設プロジェクトだ.ただし,その建設を担っているのは政府でもなければ公益事業でも世界銀行コンソーシアムでもない.建設しているのは,太陽光パネルを農家に販売しているスタートアップだ.販売にあたっては,分割返済プランを示している.これが機能している.
2024年に販売された太陽光発電製品は,3000万を超えている.アフリカ各地で,毎月,40万もの太陽光設備が新しく売れた計算だ.市場シェアの 50% は,15年前には存在していなかった企業がとっている.炭素税控除が,その費用を助成している.IoT チップがあらゆる機器に組み込まれている.日に2ドルを稼ぐ人たちのローン返済率が,90%を上回っている.(…) いっこうに送電網が実現しなかったのが,いまや祝福になっている.経済開発の専門家たちは50年も費やしてアフリカの田舎にどうやって20世紀型インフラを広めようかと議論してきたのに,ここにきてもっと興味深い事態が起こってる:かわりにアフリカは21世紀バージョンを建設したんだよ.
モジュラー式.分散型.デジタル.利用者がその建設資金を負担し,その設備で削減される炭素排出量で助成金を受ける.
サイバーパンクは,複数の国家が巨大企業と並び立つ未来像だった――巨大企業が国家を支配している場合もちらほらあった.たぶん,ソーラーパンクの未来像は,弱小国家ばかりがひしめく無政府テクノロジー世界だ.その世界では,独立した個々人と小さな地域社会がみずからの手にテクノロジーをおさめるしかない――とことんアフリカらしい未来像だ.
そして,そこが大事なところだ.だって,人類の未来は,アフリカの未来なんだから:

[Noah Smith, “Solarpunk is the future of Africa,” Noahpinion, November 23, 2025]