タイラー・コーエン「実質所得の中央値が 5.2% 上昇」

[Tyler Cowen, “Real median income rose 5.2%,” Marginal Revolution, September 14, 2016]

もちろん,いいニュースだ.ただ,次の点はぜひ留意しておきたい (NYT):

世帯所得の中央値はいまなお景気後退前の2007年の数値を 1.6% 下回っている.また,1990年代後半の好況期に過去最高を記録したピークに比べると 2.4 パーセント下回ったままだ.

予想外のかなり好調な所得増加があってもなお,アメリカでは中流階級の範疇にこれといって顕著な稼ぎの増加をみないまま,かれこれ20年近くがすぎている.

また,次の点も留意しよう:2日前,事態はわるくないけどまだまだ動きが緩慢だと誰も彼もが言っていたし,その見解を支持する証拠は参照しきれないほどたくさんあった.たぶん,ああ言ってた人たちはやっぱり正しいんだろう.たった1つの数字に反応しすぎない方がいい.「なんでも悲観論者」になんかならなくても,「5パーセントも賃金が伸びた世界にいるような感じがしないなぁ」と思うことはできる.

べつの論点として,こうした所得の伸びが田舎の地方にはほぼまったく広まっていない点にも留意しよう.つまり,大都市部には 7.4% の賃金上昇がおきた — これって,建築の規制緩和を支持する根拠を強めるだろうか?

本筋に話を戻すと,よくこういう主張を聞く――「賃金停滞問題は,債務による深い景気後退の結果にすぎない」 たしかにそれも一因にはちがいない.でも,それだけでは 1999-2000年にまで冴えない賃金のデータがさかのぼる理由が説明されない.なんで大不況どころか不動産バブルすらはじまってなかった時期から賃金の伸びが停滞していたのか,そこが説明されない.

なにか構造的なものがアメリカ経済でひどくわるいことになっているんだ.その構造問題の修復をしめす大きなきざしがこのデータポイントであってくれればと思う.ざんねんながら,まだぼくもそんなに楽観的ではなくてね.

追記:連銀が次になにをいつやるべきか,ぼくはわからないという立場だったし,いまもそれは変わらない.ただ,インフレ圧力をしめすすぐれた短期的指標としての賃金上昇が欠如していることを引証する人たちに聞きたいんだけど(ぼくの見解はちがう,1つ前のポストを参照)――これで心変わりするのかな?

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