タイラー・コーエン 「若き経済学者の苦悩の日々を描いた小説」(2011年7月9日)/「えっ! 私をモデルにした人物がオランダの小説に登場だって!?」(2011年5月28日)/「『夫婦円満』」(2009年7月12日)

●Tyler Cowen, “A new novel about an economist, by an economist”(Marginal Revolution, July 9, 2011)


経済学者が主人公の小説が出るらしい。著者は、マイケル・クライン(Michael W. Klein)。経済学者だ。本のタイトルは、『Something for Nothing』。2011年9月にマサチューセッツ工科大学出版局(MIT Press)から発売予定。本の紹介文を以下に引用しておこう。

デヴィッド・フォックス――コロンビア大学で経済学の博士号を取得した後、ニューヨーク州のニッターズビル [1] 訳注;架空の町 にあるケスター大学 [2] 訳注;架空の大学 で客員准教授に着任――は、ストレスまみれの毎日を送っていた。(ニューヨーク州の州都である)オールバニーに近いというのが唯一の取柄である小さな町の小さな大学で、任期付きのポストを手に入れたばかり。講義に出てくる学生はと言うと、誰一人として『ヤバい経済学』を読んでいない始末。講義のコツをつかみつつあると感じてはいるが、「社会問題の経済学」(フォックスが受け持っている講義)に出席する美しくて利発な一人の女子学生に心惹かれて講義になかなか集中できないでいる。研究の方はどうかと言うと、控えめに言っても、はかどっているとは到底言えない。このままでは、テニュア(終身在職権)を取れるかどうかも心許ない(前任者は、現在書店で働いている)。そんな折、「価値経済学支援アカデミー」(SAVE)傘下で右派のシンクタンクである「スピリチュアルな社会の実現に向けた研究センター」(CROSS)から接触がある。フォックスがまだ大学院生だった時に書いた論文を公刊して、その内容を世間に伝えたいというのだ。ただし、一つの条件が付いていた。その論文では、高校生への性教育プログラムの好ましい効果が実証的に明らかにされているのだが、“Something for Nothing” [3] … Continue readingという人目を引くタイトルに変更した上で公刊させてほしいというのだ。実はその論文には不備があるのは重々承知していたものの、フォックスはその申し入れを喜んで受け入れる。先輩の同僚も語っていたように、結局のところ、学者にとって論文が出版されるというのは「法貨(身分の証)」(“the coin of the realm”)を手にするに等しいのだ。

しかしながら、フォックスはジレンマに陥ることになる。彼の論文の実証結果に対して他の研究者から突込みが入ったのだ。フォックスの苦悩はそれだけにとどまらない。学内政治に、ニッターズビル生まれの女性とのロマンス、1年ごとの面接という名の厳しい試練、未来の雇い主候補に向かって耐え難い環境下で最高のプレゼンを行わねばならない緊張。フォックスの挑戦は、若き経済学徒たちのために役立つ教訓を指南するフィクションというにとどまらない。仕事と私生活の間で/成功と誠実さの間で/忠誠と欲望の間でバランスをとるにはどうしたらいいかに気を揉む誰もが楽しめる愉快で滑稽な物語でもあるのだ。


●Tyler Cowen, “Am I in a Dutch novel?”(Marginal Revolution, May 28, 2011)


あのMonkey Cageブログの執筆陣に名を連ねているエリク・ヴォーテン(Erik Voeten)から次のようなメールを頂戴した。

つい先日、名の知れた――あくまでも、オランダでは有名という意味ですが――作家であるアルノン・フルンベルク(Arnon Grunberg)の小説を読む機会がありました。その小説の主人公であるオランダ人の男(経済学者)は、家族と婚約者を故国に残してアメリカに旅立ちます。その理由は、ジョージ・メイソン大学で経済学を教えるためです。ジョージ・メイソン大学の同僚の中にエリオット・へーゲルという名前の教授――主人公の親戚とかいうわけじゃありません――がいるんですが、彼は「幅広い関心を持った経済学者で、経済学や料理の話題が中心のブログを運営している。中華料理を食べるのが趣味」だとのことです。

ヘーゲルは、物語の主要キャストというわけじゃありません。主人公に豚の耳を無理矢理食べさせるのが、彼(ヘーゲル)が物語の中で演じる一番重要な役割みたいです。とは言え、この件は貴殿に面白がってもらえるんじゃないかと思いました。小説のタイトルは、『Huid en haar』(「歯と爪」)です。フルンベルクの過去の作品は何冊か英語に翻訳されていますが [4] 訳注;一冊だけ邦訳されているようだ。、この本はまだ英訳されていないと思います。フルンベルクのデビュー作は、ニューヨーク・タイムズ紙で書評されています。そのURLは以下です: http://www.nytimes.com/1997/02/02/books/sex-drugs-and-slivovitz.html?src=pm


●Tyler Cowen, “A Happy Marriage”(Marginal Revolution, July 12, 2009)


今回紹介するのは、ラファエル・イグレシアス(Rafael Yglesias)の新作の小説だ。タイトルは、『A Happy Marriage』(「夫婦円満」)。ほんのちょっぴり引用しておこう。

消費者としては何でもすぐに信じ込みやすいエンリケだが、愛のことになると一転して疑い深くなる。何か異変はないかと詮索せずにはいられないのだ。

飛行機に乗りながら、貪る(むさぼる)ように読んだ。結婚している人にも、かつて結婚していた人にも、結婚する予定の人にも、結婚すべき人にも、そうすべきじゃない人にも、文句なくお薦めできる一冊だ。

ちなみに、ラファエル・イグレシアスの息子は、有名なブロガーのマシュー・イグレシアス(Matthew Yglesias)だが、息子のマシューも小説の中で何度も――本人そのままというわけではなく、架空の人物として――カメオ出演を果たしている。さらには、経済学者のポール・ジョスコウ(Paul Joskow)も同じく――本人そのままというわけではなく、架空の人物として――カメオ出演を果たしている。ジョスコウは、マシューの叔父にあたる――小説の中の話ではなく、この現実の世界で――。

この本の中では、ミクロ経済学とマクロ経済学の正確な違いが――冗談交じりに――説明されているが、そんな芸当をやってのけられる小説って他にどのくらいあるだろうかね?

過去20年に限って言えば、ラファエル・イグレシアスはアメリカの小説家の中で最高の作家の一人であり、おそらくは最も過小評価されている作家というのが私なりの意見だ。彼の過去の作品である『Dr. Neruda’s Cure for Evil』もかつて取り上げたことがある。興味のある向きは、あわせて参照されたい。

References

References
1 訳注;架空の町
2 訳注;架空の大学
3 訳注;「タダで何かを手に入れる」という意味。「タダ」=高校生への性教育プログラム/「何か」=好ましい効果(10代で妊娠する可能性の低下、学業成績の向上など)。
4 訳注;一冊だけ邦訳されているようだ。
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