●Tyler Cowen, “A world without nuclear weapons?”(Marginal Revolution, December 29, 2009)
「核兵器のない世界」(核保有国が手持ちの核兵器をすべて廃棄した後の世界)ってどんな世界だろうか? www.bookforum.com 経由で知ったのだが、トーマス・シェリング(Thomas Schelling)が最新のエッセイでその問いに取り組んでいる。いつも通りのクールで洞察力溢れる分析が加えられているが、「核兵器のない世界」はみんなでワイワイとピクニックに興じられるような世界とはならないだろうというのがシェリングの見立てだ。ほんの一部だけだが、引用しておこう。
まとめるとしよう。「核兵器のない世界」はどんな世界になりそうかというと、米国にしても、ロシアにしても、イスラエルにしても、中国にしても――そして、その他の半ダースないし1ダース(6~12カ国)程度の(核兵器を生産する能力を持ち合わせている)国々にしても――、必要とあらば(どこかの国と戦争になったり、あるいは戦争が起きそうだとなった場合に)すぐにも核兵器の再生産に漕ぎ着けるように――そして、核兵器を運搬するための手段をすぐにも調達できるように――あらかじめ綿密な動員計画を練っておくだけでなく、相手国にある核兵器の生産施設を先制攻撃で破壊できるように相手国のどこに核兵器の生産施設があるかを前もって調べ上げておこうとするだろう。常日頃から実践的な訓練が繰り返されて、安全な緊急用の通信手段が用意されることだろう。あらゆる危機が核危機に転じる恐れ(おそれ)があるし、あらゆる戦争が核戦争に発展する恐れがあるだろう。その数がほんのわずかであっても核兵器の再生産に真っ先に成功した国は相手を屈服させる(あるいは、相手に先制攻撃を仕掛ける)力を手に入れることになるので、どの国も核兵器の再生産競争で一番乗りになろうと躍起になることだろう。「核兵器のない世界」は、緊張感あるピリピリした世界になりそうだ。