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フランシス・ウーリー「銃を陳腐化する」(2018年3月5日)

Frances Woolley, “Making Guns Obsolete” (Worthwhile Canadian Initiative, March 5, 2018)

アメリカ合衆国は特異な銃文化を持っているとされている。しかし経済学者にとって文化というのはおもしろくない説明だ。私たちは文化の起源を探す、それを促進し維持しようとする経済的・社会的影響を探すのだ。

狩猟、開拓生活、そして戦争はアメリカの銃文化が如何に始まったかを説明することはできるが、維持についてはそうでもない。銃に親和的な地方は人口を失っており、人口増加は銃所持率の低い都市部と郊外に集中している。最も急激に増加しているアメリカの人口区分、すなわちヒスパニック、アジア系、黒人といった人々は、最も銃を所持しそうにない。それに、このトレンドは何十年も続いている。これは成人アメリカ人の銃非所持世帯率が1973年に50%だったのが、2014年には64%に増加した理由を説明できる(総合社会動向調査のデータはこちら)。 [Read more…]

フランシス・ウーリー 「トロントの方がオタワよりも暖かいのに、屋外でスケートを滑れる期間が長いのはなぜ?」(2014年12月26日)

●Frances Woolley, “Why does Toronto have better outdoor ice than Ottawa?”(Worthwhile Canadian Initiative, December 26, 2014)


トロントは、オタワに比べると、気温が高い(暖かい)傾向にある。それにもかかわらず、トロントの方がオタワよりも屋外のスケートリンクに恵まれているのは、どうしてなのだろうか?

 「そんなことはない」という反論もあることだろう。(オタワ市の中央を流れる)リドー運河を見ろ。冬になると、リドー運河は(凍結して)世界最長のスケートリンクに様変わりするではないか。それだけではない。市内の公園に足を運べば、あちこちにスケートリンクがあるではないか。そんな反論の声が聞こえてきそうだ。しかしながら、オタワ市内の屋外にあるスケートリンクは、ほぼすべてが天然のリンクだ。気温が上がると、リンクは溶けて水たまりに一変してしまう(上の写真をご覧あれ)。

どうやら、今シーズン(2014年から2015年にかけての冬場)に関しては、オタワで屋外の(天然の)スケートリンクが姿を現すのは、年明けの1月までずれ込みそうだ。その一方で、トロントでは、屋外のスケートリンク場の営業は、もう既に11月の終わり頃から始まっている。

トロントはオタワよりも3~4℃ほど気温が高いにもかかわらず、屋外でスケートができる期間が1~2ヶ月も長いわけだ。一見すると、奇妙に思える。しかしながら、トロントの方がオタワよりも屋外のスケートリンクに恵まれているのは、トロントの方がオタワよりも暖かいからこそなのかもしれないのだ。 [Read more…]

フランシス・ウーリー「ビール品質格差指数」(2015年7月19日)

Frances Woolley, “The Beer IneQuality Index”(Worthwhile Canadian Initiative, July 19, 2015)

よくありがちなカナダ人のアメリカ産ビールに対する意見は、水っぽくてアルコールが弱いというものだ。しかしアメリカのビール醸造所は世界最高のビールをも生産している。アメリカ全土の地ビール醸造所の中に見事な品質のものが出てくるのだ。

アメリカについて驚愕するべきことは、国内の格差、もっと正確にいうと、ビールの品質の不均等さのレベルである。ドイツやベルギーといった国々、そしてスカンジナビア諸国も一般に、ビールの品質についてはそこまでばらつきはない。 [Read more…]

フランシス・ウーリー 「見せびらかしの政治」(2011年4月7日)

●Frances Woolley, “Conspicuous Politics”(Worthwhile Canadian Initiative, April 07, 2011)


今日のことだ。外を出歩いていると、スノードロップだとか、クロッカスだとかが植えられている、きれいな庭のある家のそばを通り過ぎたのだが、その家には、「緑の党」支持者であることを示すローンサイン(立て札)もあわせて掲げられていた。しばらく歩くと、今度は、玄関の前の柵に自転車をつなぎとめてある家の前を通り過ぎた。その家には、「新民主党」(NGP)支持者であることを示すローンサインが掲げられていた。さらに先へと歩を進めると、手入れの行き届いている庭のある家の前にたどり着いた。その家には、「カナダ自由党」支持者であることを示すローンサインが掲げられていた。

ジェフリー・ミラー(Geoffrey Miller)の『Spent』(邦訳『消費資本主義!:見せびらかしの進化心理学』)は、住まいの様子とそこに暮らす住人の政治信条(どの政党を支持するか)との間のつながりについて、いくばくかの光を投げかけてくれる。ミラーは、本書で、「見せびらかしの消費」(誇示的消費)に関する古くからある理論に、最新の心理学の知見を融合させている。私たちの消費選択(購買行動)は、「私はこういう人間です」(人となり、性格)ということを、周囲に対してシグナルしようとの衝動によって突き動かされている。ミラーはそう語る。そして、人間の性格(パーソナリティ)は、以下の六つの特性(Central Six)に還元できるという。すなわち、一般知能(g因子)(general intelligence)、開放性(openness)、誠実性(conscientiousness)、調和性・協調性(agreeableness)、情緒安定性(stability)、外向性(extraversion)の六つ。 [Read more…]

フランシス・ウーリー「計量経済学初心者が間違ったことに一生懸命になるのはなぜなのか」

Frances Woolley “Why do beginner econometricians get worked up about the wrong things?” (Worthwhile Canadian Initiative, March 23, 2014)

(訳者補足:本エントリは計量経済学を学んだことがある方向けですので、あらかじめご承知おきください。)


初めて回帰分析にかけてみるとき、初歩的な間違いをする人が多い。配偶者の労働時間のような、サンプルの半分以上に欠けている変数を含めることで、うかつにも大量のオブザベーションを弾いてしまったりする。また、そうすることに何の意味もないときでさえ、全てのオブザベーションをデータセットに入れたりする。例えば、運転中に携帯電話で通話する人を予測するための回帰分析に、運転可能年齢未満の個人を含めてしまったりといった具合だ。また、子供の有無や婚姻状況といった、ほぼ間違いなく分析にとって重要な変数を制御するのに失敗してバイアスを作り出してしまう。

それでも私のオフィスアワーに来て、「僕はサンプルを適切に選んだでしょうか?」といった具合に尋ねてくる人があることは稀だ。その一方で毎年毎年、学生たちはプロビットやロジットのモデルの使い方を学ぶことに取りつかれていて、それはもう0-1の従属変数を最小二乗法の回帰にかけようものならコンピュータが爆発するか計量経済学の神の罰でも食らうんじゃないかといった具合だ。 [Read more…]

フランシス・ウーリー 「戦争捕虜収容所の経済学」(2010年11月7日)

●Frances Woolley, “Remembering prisoners of war”(Worthwhile Canadian Initiative, November 7, 2010)


終戦記念日(Remembrance Day)の意義とは何なのだろうか? 戦争を知らない我々のような世代がそのことを理解する上では、実際に戦場に出向いた兵士の言葉が助けとなることだろう。

リチャード・ラドフォード(Richard Radford)は、まさしくそのような兵士の一人である。ラドフォードは、ケンブリッジ大学の学生として日々勉学に励んでいたが、1939年に第二次世界大戦が勃発したことを受けて、一時的に学業を離れて、イギリス陸軍に入隊することになった。しかしながら、1942年にアフリカのリビアで、ドイツ軍により捕虜として捕えられ、終戦までの残りの期間を戦争捕虜収容所で過ごすことになる。そんな彼が、捕虜収容所から釈放されて間もないうちに書き上げた論文が、“The Economic Organisation of a P.O.W. Camp(pdf)” だ。この論文は、今でも十分読むに値するものだ。というのも、この論文を読むことで、戦時下での生活というのがどのようなものかを知れるだけでなく、経済活動の「普遍性と自生性(自然発生的な性質)」(”the universality and the spontaneity” of economic activity)についてもいくつか教訓を学ぶことができるからである。 [Read more…]