ヨーロッパ時間月曜朝4時、我々はアメリカの集団的脳出血としか言いようのない、決して夢などではない、破壊的な金融的帰結を目撃した。
はっきりさせておきたいのは、これはマクロ経済のファンダメンタルズや外的ショックによって引き起こされた危機などではないということだ。人為的な災害である。そして張本人はドナルド・J・トランプである。
アメリカ時間日曜夜、トランプは「株価の下落は望まないが、薬を飲まなければならない時もある」と宣言し、燃え盛る炎にガソリンを注ぎ込んだ。つまり、トランプは、経済を破壊する貿易戦争政策に頑なにしがみついている。
市場の反応は、即座かつ苛烈なものだった。
アジアの株式市場は完全なメルトダウンモードに突入し、日本市場は一夜にして8%下落し、香港株は10%急落した。欧米市場が今日開けば、世界的な売り込みの発生を確実に見ることができるだろう。
しかし、これはもはや株式市場だけの問題ではない。感染は拡大している。
信用市場はストレスの兆しを見せており、流動性不足のリスクが急激に高まっている。グローバルな金融システム全体が脅威にさらされている――そして危機はまだ初期段階にすぎない。
原油価格も打撃を受け、1バレル60ドルを割り込み、さらに3%下落した。これは、単なる不確実性ではなく、世界的な需要の急減という本格的な懸念を反映している。
不況・インフレ・混乱
現時点でアメリカの景気後退はほぼ避けられないと思われる。今後数ヶ月で、アメリカの失業率は著しく上昇すると予測される。

以前私は、トランプの関税政策がアメリカのインフレ率を5%超押し上げると論じた。これは、貿易障壁による負の供給ショックを根拠とした予測だ。しかし、もはやこの予測は当てはまらないかもしれない。今や、金融混乱に端を発した大規模な需要ショックにも直面している。これらショックは、インフレをそれぞれ逆方向に引っ張る〔負のショックによるスタグフレーション的インフレ上昇、需要ショックによるデフレ的インフレ低下〕が、どちらも世界の経済成長に重くのしかかることになる。
インフレがどのように進展しようとも、結論は明白である。世界は、アメリカ政府によって人為的に作られた景気後退に向かっている。
一人の男が招いた災害
疑う余地はない――この災害は一人の男によって引き起こされた。大統領、ドナルド・トランプ。以後、数日・数週間でトランプの支持率は急落するだろう。ニクソン大統領のウォーターゲート事件を想起する政治的形勢のターニングポイントであり、ついに本格的な政治的反転となるかもしれない。
トランプは、世界市場が暴落しているにもかからず、「関税は素晴らしい」と言い続けている。
このため、対応の重責は、FRBと各国の中央銀行に委ねられることになった。2020年のコロナパンデミックによるロックダウン危機の際に見られたように、市場を安定させ、世界的な流動性確保のための各国中央銀行による強調介入がももなく、早ければ月曜日にも行われることになると私は予測する。
自制と反逆の必要性
EUがエスカレートの衝動を抑制することを願うばかりだ。アメリカへの報復関税は現時点では見送るべきだ。ヨーロッパが報復すれば、状況は劇的に悪化するだろう。
振り返ること2月、私は苛立ちのあまり「3ヶ月以内にトランプは辞任に追い込まれるんじゃないか」と書いた。その可能性が現実味を帯びてきた。
近く、超党派の反乱が議会で起こるかもしれない。例えば、共和党議員が民主党議員と連携し、トランプからこれ以上の関税引き上げの権限を剥奪する等だ。現段階では、これが被害拡大防止の唯一の政治的手段かもしれない。
さらに、トランプ政権内からの離反者が出る可能性も高まっていると考えている。マルコ・ルビオ国務長官やスコット・ベンセント財務長官らが辞任し、公然と反旗を翻すかもしれない。
トランプは引き下がるだろうか? 可能性は低い。彼はほぼ間違いなく、銀行やメディアといった「グローバリスト」に責任をなすりつけるだろう。つまり、トランプのより常軌を逸した自暴自棄の行動に備えないといけない。しかし、そうしたトランプの行動は、共和党からの支持をさらに損なうだけだろう。
トランプを排除すればこの危機は終わる。
[Lars Christensen, Collective American Madness: Trump’s Trade War Sparks a Global Financial Firestorm, The Market Monetarist, April 7, 2025.]