マーク・ソーマ 「肥満児が増えているのは食品のテレビコマーシャルのせい?」(2005年7月15日)/タイラー・コーエン 「セサミストリート効果 ~あるいは、エルモ効果~」(2010年4月20日)

●Mark Thoma, “Did Jared Cause You to Eat at Subway?”(Economist’s View, July 15, 2005)


長い長い運転もようやく終わって、ほっとしているところだ。道中でサブウェイに立ち寄ったのだが、ワシントン・ポスト紙のこちらの記事を読んでふと疑問に思う。「どうしてサブウェイに立ち寄ったんだろう?」と。おそらくは、「低脂肪!」という売り文句に吸い寄せられたんだろうと思う。読者の皆さんも同じような経験をしたことがあるんじゃないだろうか? 子供たちも魅力的な広告に影響されたりするんだろうか? その答えが「イエス」だとしたら、政府の介入が正当化されることになるんだろうか? 「市場の失敗」が生じているのだとしたら、それは「育児の失敗」を反映しているんだろうか? 「市場の失敗」が生じているのだとしたら、政府は何らかの役割を果たすべきなんだろうか?

TV Feeds Kids Fewer Food Ads, FTC Staff Study Finds” by Caroline E. Mayer:

連邦取引委員会(FTC)のスタッフによる調査結果によると、子供たちがテレビで食品のコマーシャルを目にする機会が28年前に比べて大きく減っているとのことだ。1977年の時点では、子供たちはテレビで1日に18回以上は食品のコマーシャルを目にしていたという。それが現在(2005年時点)では、その回数が1日に13回程度に減っているというのだ。・・・(略)・・・この調査結果は、連邦取引委員会と米国保健福祉省(HHS)が共同で主催したワークショップの冒頭で公表されたものであり、食品のテレビコマーシャルが子供の肥満にどのような影響を及ぼしているかに加えて、食品産業がコマーシャルの自主規制(自粛)にどれだけ力を入れているかを探るのが調査の動機になっている。・・・ (略)・・・アメリカでは、子供の肥満率が1970年から現在までの間に倍以上に高まっている。・・・(略)・・・「子供たちがテレビで食品のコマーシャルを目にする機会が昔よりも大きく減っているという調査結果は、子供の肥満率が急上昇している責任を食品メーカーのマーケティング担当部門に押し付けることができないことを裏付ける何よりの証拠です」と語るのは、製造メーカーと広告代理店が会員となっているアメリカ広告連盟(AAF)の会長を務めるウォーリー・スナイダー(Wally Snyder)氏だ。「犯人は、広告(コマーシャル)じゃないんですよ。運動不足と食べ過ぎこそが真の犯人(肥満児が増えている真の原因)なんです」とスナイダー氏。

ハーバード大学に籍を置く心理学者でNPO団体の「コマーシャルから自由な子供時代の実現に向けて」(CCFC)の創設者でもあるスーザン・リン(Susan Linn)氏は、企業の宣伝活動に批判的な論者の一人だが、子供たちがテレビで食品のコマーシャルを目にする機会が減っている理由は、食品メーカーがテレビコマーシャル以外の販促活動――商品のパッケージデザインを工夫したり、インターネットのオンラインゲームの中で広告を表示させたり――に力を入れ出しているためではないかと語る。子供たちが食品のコマーシャルを目にする機会が減っている一方で、シュガーシリアルやフルーツスナックのような子供向けの食品(お菓子)の広告にスポンジ・ボブのようなテレビアニメの人気キャラクターが使用されるケースが増えている事実も見逃せないとも付け加える。リン氏は語る。「スポンジ・ボブの番組自体が子供たちに大量のジャンクフードを売り付けるためのコマーシャルになっているのです」。

FTCのデボラ・プラット・マジョラス(Deborah Platt Majoras)委員長は、ワークショップの開会の挨拶の中で、子供向け食品のテレビコマーシャルの放送を禁ずるのは賢明でないし、FTCにその権限はないと述べた。しかしながら、次のような警告も付け加えた。「食品メーカーの側にとっても、現状のままにしておくのは賢明ではないでしょう。現状のままに放っておけば、消費者からそっぽを向かれてしまう恐れがあるだけではありません。既存の食品メーカーがこの問題に誠意を持って取り組まずに積極的な措置を講じないままでいると、新規参入勢力に間隙を突かれてマーケットを奪われてしまう羽目にもなりかねません」。・・・(略)・・・子供向け食品のテレビコマーシャルが昔よりも減っているというのは確かだ。しかしながら、同調査によると、・・・(略)・・・シリアル食品、アメ、おもちゃといった商品――1977年当時のテレビコマーシャルで盛んに宣伝された商品――のコマーシャルを幼い子供たちがテレビで見る機会は大きく減っているものの、レストラン、ファーストフード店、映画、ビデオゲーム、DVD、ヨーグルトのようなお菓子のテレビコマーシャルは昔よりも増えているという。

この問題は(政府ではなく)親に任せておけばいい、というのが私の意見だ。

——————————————————-

●Tyler Cowen, “Branding — some results which appear temporary to me”(Marginal Revolution, April 20, 2010)


おそらく効果はあくまで一時的なものだろう。

「セサミワークショップ」が実施した第一回目の『エルモ/ブロッコリー』調査によると、食品のパッケージにセサミストリートに登場するキャラクターのステッカーを貼り付けると、その食品の摂取量が増えることが明らかになった。例えば、ブロッコリーとチョコバーのどちらか一方を好きに選んで食べてもいいと言われると、どちらの食品のパッケージにも一切ステッカーが貼り付けられていない「コントロール・グループ」に振り分けられた子供たちのうちの78%はチョコバーを選んだ(残りの22%はブロッコリーを選んだ)。その一方で、エルモのステッカーがパッケージに貼り付けられたブロッコリーと、見たこともないキャラクターのステッカーがパッケージに貼り付けられたチョコバーのどちらか一方を好きに選んで食べてもいいと言われた子供たちのうち、50%はチョコバーを選び、残りの50%はブロッコリーを選んだ。この調査結果は、セサミストリートに出てくるキャラクターに健康食品(ヘルシーな食品)の魅力を高める強い力が備わっている可能性を示唆している。

全文はこちら [1] 訳注;リンク切れ。代わりに、マシュー・イグレシアスのこちらのエントリーを参照されたい。。情報を寄せてくれた Dan Lewis に感謝。

References

References
1 訳注;リンク切れ。代わりに、マシュー・イグレシアスのこちらのエントリーを参照されたい。
Total
0
Shares

コメントを残す

Related Posts