マーク・ソーマ 「緊縮策は経済を成長させるか?」(2012年1月18日)

マンデヴィルによると、みんなが一斉に浪費や贅沢(ぜいたく)をやめたら、景気が悪化して失業者が街にあふれるらしい。それじゃあ、政府が緊縮策に乗り出したらどうなる?
画像の出典:https://www.photo-ac.com/main/detail/23013458

ロバート・シラー(Robert Shiller)は、私に比べると、「拡張的な財政緊縮」論にいくらか寛容なようだ。とは言え、政府による緊縮策は景気の刺激(拡張)につながらないというのが彼の最終的な結論のようだ。

Does Austerity Promote Economic Growth?” by Robert J. Shiller, Project Syndicate:

オランダ生まれでイギリスで活躍した哲学者にして風刺家のバーナード・マンデヴィル(Bernard Mandeville)は、今や古典となっている『蜂の寓話:個人の悪徳は公共の利益』(1724年刊)で、繫栄していた蜂の社会が節制という美徳に急遽目覚めた末にどんな帰結を迎えたかを韻文(詩)のかたちで描き出している。浪費や贅沢(ぜいたく)から一斉に手が引かれた末に、どんな結果が待っていたか?

土地も家屋もその値が下がる。
かのテーベの建造物を思わせるがごとき、
演奏によってその壁が建てられたという立派な宮殿も貸しに出され  る始末。

・・・(中略)・・・

建築業はガタガタになり、
職人たちには仕事がない。

・・・(中略)・・・

職にあぶれずに済んだ残りの者も節制の毎日。
どう金を使うかにではなく、
どう生き抜くかに頭を絞る。

金融危機を受けて緊縮策に乗り出した後の先進諸国の状況とそっくりじゃないだろうか?

・・・(中略)・・・

緊縮(節制)についてのマンデヴィルの言い分が正しいかどうかを見極めるには、どうしたらいいのだろう? 彼特有の研究手法――理論を詩で表現するというその手法――に納得する現代人なんて、ほとんどいないだろうし・・・。

・・・(中略)・・・

政府による緊縮策に人々がどう反応するかを予測できる抽象的な理論などない。やれることと言えば、歴史的な証拠に目を向けるくらいしかないのだ。そして、歴史的な証拠を検証した研究の結果によると、・・・(略)・・・政府が意図的に緊縮策に乗り出すと、その後に厳しい状況が訪れる(景気が悪化する)傾向にあることが示されているのだ。

政策立案者たちには、経済学者たちが最終的な結論を出すまで何十年も悠長に待っている余裕なんかない。最終的な結論なんて出ない可能性だってある。しかしながら、これまでに得られている証拠に照らす限りだと、欧州をはじめとしてあちこちの政府によって試みられている緊縮策は、不本意な結果に終わる可能性が高いように思えるのだ。


〔原文:“Shiller: Does Austerity Promote Economic Growth?”(Economist’s View, January 18, 2012)〕

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