驚きの結果ではないが、イヤな結果ではある。
ドル紙幣の包括的な「DNA鑑定」に世界で初めて乗り出したニューヨーク大学の「ダーティーマネー・プロジェクト」によると、紙幣(銀行券)は、実に多彩な種類の細菌を手から手へと交換し合う手段であることが判明したという。
1ドル紙幣に付着している遺伝物質を分析したところ、一枚の紙幣に住み着いている3000種類の細菌を特定するのに成功したという。顕微鏡でサンプルを調査する従来の研究で見つかっていた数の何倍にも上る。とは言っても、発見されたヒト以外の遺伝子(全部で15000種類)のうちで、その正体を特定できたのは20%に過ぎない。残りの80%の微生物については、DNAデータバンクに登録されていなかったので、正体を特定できなかったのである。
紙幣に付着している微生物の中でその数が一番多かったのは、ニキビを引き起こす原因となる細菌。胃潰瘍、肺炎、食中毒、ブドウ球菌感染症の原因となる細菌も見つかったという。薬剤耐性遺伝子が付着している紙幣もあったという。
「大変驚きました」と語るのは、ジェーン・カールトン(Jane Carlton)氏。ニューヨーク大学の遺伝学&システム生物学センター長で、「ダーティーマネー・プロジェクト」を率いている人物だ。「お金に付着している微生物が成長するのも目にしたんです」。
ちなみに、銀行券が出回り出した19世紀に貨幣がテーマの書物なり論文なりでたびたび槍玉に上がったのが、細菌だった。銀行券には細菌が付着していると糾弾されたのだ。
〔原文:“Don’t put your money where your mouth is” [1]訳注;“Put your money where your mouth is.” … Continue reading(Marginal Revolution, April 19, 2014)〕
References
↑1 | 訳注;“Put your money where your mouth is.” というのは、「口にお金を当てよ」という意味ではなく、「つべこべ言わず行動せよ」(口で言うだけでなく行動で示せ)という意味の慣用句。その否定形は、「発言と行動が違ったっていい」という言行不一致のススメのような意味になるだろうが、邦題は「口にお金を当てよ」を否定するかたちにしておいた。 |
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