タイラー・コーエン 「フランコ・モディリアーニとファシズム」(2017年2月11日)

●Tyler Cowen, “Franco Modigliani and the history of Italian fascism”(Marginal Revolution, February 11, 2017)


見過ごされがちなことがある。モディリアーニが自らの半生を回想した文章の中で意図的にぼかしているところもあるように見えなくもないのだが、モディリアーニは20歳になる頃までにイタリア国内の論壇で名を知られた「ファシスト界の神童」として通っていたのである。1936年(モディリアーニが18歳の時)には、経済学分野の著作に対して与えられる賞をあのベニート・ムッソリーニから直接手渡されている。まだある。1947年(モディリアーニが29歳の時)には、社会主義経済を是とする75ページに及ぶ論文をイタリア語で著(あらわ)している。その論文のタイトルを英訳すると、“The Organization and Direction of Production in a Socialist Economy”(「社会主義経済における生産活動の組織と指揮」)となるだろう(Modigliani 1947)。2004年と2005年には、モディリアーニが1937~1938年の間にイタリア語で「ファシストとしての立場」に立って著した5本の論文が英訳されている――それらはいずれもダニエラ・パリシ(Daniela Parisi)による編集でModigliani(2007b)の中に収録されている――。しかしながら、「社会主義者としての立場」に立って著された先の1947年論文の全文は、未だ英訳されずにいる。そこで、1947年論文の抜粋訳を本稿の付録として掲載することにした。英訳の労をとってくれたのは、ヴィヴィアナ・ディ・ジョヴィナッツォ(Viviana Di Giovinazzo)。ジョヴィナッツォには深謝する次第。

Econ Journal Watch に掲載された論文(pdf)からの引用だ。著者は、ダニエル・クライン(Daniel B. Klein)&ライアン・ダザ(Ryan Daza)の二人。上の引用の最後でも指摘されているように、ヴィヴィアナ・ディ・ジョヴィナッツォによる(モディリアーニの1947年論文の)英訳付きだ。Econ Journal Watchのサイトにあるこちらのページでは、モディリアーニだけでなくその他のノーベル経済学賞受賞者たちの「イデオロギー遍歴」がまとめられている(どれもこれも興味深い)。ところで、今回のエントリーの狙いは、モディリアーニを叩くことにはないことを断っておこう。ファシスト的な発想の驚くべき浸透力を指摘したかったのだ。それに加えて、ファシズムにしてもその他の権威主義的な体制にしても、人間の創造性に対する大いなる足枷(あしかせ)になりかねないことを指摘したかったのだ。モディリアーニがムッソリーニ治下のイタリアにいつまでもとどまり続けていたとしたら、おそらくはキャリアを転向する機会を掴(つか)めずに一生を終える羽目になってしまっていたことだろう。

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