もしあなたが、たった0.5%しか金利を引き上げないという本日〔2022年12月14日〕のFed〔連邦準備制度〕による決定が、インフレとの闘いを彼らが早々に諦めることを示すのではないかと心配しているのであれば、昨日〔2022年12月13日〕届いた現在のインフレ率に関するニュースがどれほど良いものであったか気づいていないのかもしれません。
この良いニュースを見落としてしまう理由は、そのデータについての議論の多くが、過去数ヶ月にわたって観測されたインフレ率の平均値に焦点を合わせているからです。平均値はノイズを除去してくれるという利点を持ちますが、基調的なトレンドの変化に関するニュースを隠してしまうという欠点も持っています。
この図は、過去12ヶ月間(2021年11月〜2022年11月)のインフレ率の平均値を点線でプロットしたものです。報道で強調されているように、この平均値は7.1%です。また、各月の過去6ヶ月間の平均インフレ率を、「ダッシュ・ドット」を使って示しています。直近の値を見ると、2021年〔誤りと思われる、正しくは2022年〕6月から11月の平均インフレ率は4.7%でした。図の真ん中にある2022年5月の値は、2021年12月から2022年5月にかけてのインフレ率が9.1%であったことを示しており、直近の値と比較して2倍近い数字であったことが分かります。
過去12ヶ月ではなく過去6ヶ月の平均で見ると、月次のインフレ率が大幅に低下していることは明らかです。間違いなく、12ヶ月平均の7.1%という数字は、現在のインフレ率をかなり過大評価してます。
しかし、基調的なトレンドに関する情報は、6ヶ月平均を用いてもなお隠れてしまいます。そのため、次の図では、平均を取らない過去12ヶ月の月次のインフレ率を示す赤の実線を追加しています。
この新たな線は、実際には月次のデータがたくさんのノイズを含むことを示しています。ある月からその次の月に、大きく上下しているのです。例えば、4月の時点で、この月のインフレ率が低いことをもって恒久的に低いインフレ率が続くと判断することは、誤りだったでしょう。一時的な上下変動を取り除くために何かしらの平均を取ることは理にかなっています。しかしながら、月次の原データを見ることにも意味があります。原データをみることによってわかることは、〔平均を取らない月次の〕インフレ率は7月以降一貫して低い値を保ち、現在はわずか1.2%になったということです。
食品とエネルギーの価格はノイズを多く含むため、エコノミストはこれらの2種類の財を除いた異なる価格指数を追っており、これは「食品及びエネルギーを除く総合指数」として知られています。(ちなみに、“CPI-U”とは、都市部〔Urban〕の消費者の物価を表す指数です。)
食品とエネルギーを除く指数
次の図は、上の図と同じように作成したものですが、食品とエネルギーを除く消費者物価指数から計算されたインフレ率を用いています。この指数は変動が少ないため、このグラフの縦軸の幅は10%ポイントと、上の図で利用していた25%ポイントよりもはるかに小さくなっています。
このグラフから、食品とエネルギーを除いて計算したより安定したインフレ率も、過去12ヶ月の平均値を大いに下回っていることが分かります。この指数によれば、11月のインフレ率は2.3%〔グラフでは2.4%〕で、過去12ヶ月の平均値である6.0%と比べとても低い値です。
さらなる良い知らせへの備え
もちろん、両方の消費者物価指数が示す現在の低いインフレ率が続かない可能性はあります。4月(全品目指数)、それから3月と7月(食品及びエネルギーを除く総合指数)のインフレ率の低さは、一時的なものであったことがわかっています。インフレ率は再び上昇するかもしれません。
一方で、食品及びエネルギーを除く総合指数から計算したインフレ率が2ヶ月連続で低下していることや、インフレ期待の高まりをもたらす食品やエネルギーの価格の高騰にもはや我々が直面していないことを考えると、今後、真の月次インフレ率が早くも目標インフレ率である2%近傍になる可能性もあります。
こうした不確実性を考慮すると、インフレとの闘いが終わったと宣言するのは時期尚早です。さらなるデータが揃うまでFedが利上げを続けることは当然のことです。
しかし、数ヶ月以内に、インフレとの闘いが本当に終わったと結論づけられるようになることは、想像に固くありません。Fedが勝利宣言の準備として利上げ幅を縮小させることもまた、理にかなっているのです。
〔原文:“Good News on Inflation”(Paul Romer, Wednesday, December 14, 2022)〕