タイラー・コーエン 「分かち合われたトラウマの波及効果」(2018年4月19日)

1995年4月19日にオクラホマシティで起きた爆破テロ事件は、実に痛ましくて悲惨な出来事だった。ところで、爆破テロ事件後のオクラホマ州では、離婚率が低下しただけでなく、出生率が高まったらしい。
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1995年4月19日にオクラホマシティで起きた爆破テロ事件の余波を検証した研究によると、トラウマになるような衝撃的な出来事を経験すると最愛の人との絆が強まるようだ。爆破テロ事件後のオクラホマ州では、離婚率が低下しただけでなく、出生率が高まったというのだ。

オクラホマシティで起きた爆破テロ事件は、悲劇的な出来事であると同時に、思いがけないケーススタディー(事例研究)の機会を提供してもいる。アメリカ国内のテロリストであるティモシー・マクベイ(Timothy McVeigh)とテリー・ニコルズ(Terry Nichols)の二人が用意した車爆弾(大量の爆発物を積んだトラック)が爆発し、アルフレッド・P・マラー連邦ビルが破壊された。168人が死亡、700人以上が負傷した。当時の段階では、アメリカ国内で起きた爆破テロで史上最も悲惨な事件だった。オクラホマシティに暮らす住民の62%が事件の影響で精神的にショックを受けたと答えている。さらには、住民の40%が事件の死傷者の中に知り合いがいると答えている。とりわけ衝撃的なのは、死者の中に子供が19人含まれていたことだ。

オクラホマシティで起きた爆破テロ事件が離婚率および出生率にいかなる波及効果を及ぼしたかを検証している研究がある。ポール・ナコネズニー(Paul A. Nakonezny)&レベッカ・レディック(Rebecca Reddick)&ジョセフ・リー・ロジャース(Joseph Lee Rodgers)の三人の共著論文によると、爆破テロ事件後のオクラホマ州では、アメリカ国内のその他の州と比べて、夫婦が別れにくくなったという。爆破テロが発生してから数カ月間にわたって、オクラホマ州の離婚率が過去10年の趨勢を下回ったというのだ。ナコネズニー&レディック&ロジャースの三人は、事件現場から距離的に近いほど波及効果(爆破テロ事件が離婚率を引き下げる効果)も大きくなるのではないかという仮説を立てたが、その仮説を裏付ける結果が見出されている。オクラホマ州内にある77の郡ごとに波及効果を調べてみると、波及効果が一番大きかった(離婚率がどこよりも低下した)のはオクラホマ郡――事件が発生したオクラホマシティがある郡――で、オクラホマシティから距離的に離れている郡ほど波及効果が小さかったのだ。

ジョセフ・リー・ロジャース&クレイグ・セント・ジョン(Craig St. John)&ロニー・コールマン(Ronnie Coleman)の三人による別の共著論文によると、爆破テロが発生してから9か月後に、オクラホマシティ都市圏でベビーブームが起きたという。結婚の寿命が伸びた(離婚率が低下した)だけでなく、子作りも盛んになった(出生率が高まった)わけだ。こちらに関しても、事件現場から距離的に離れている郡ほど波及効果(爆破テロ事件が出生率を引き上げる効果)が小さいという結果が見出されている。

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〔原文:“How do people respond to shared trauma?”(Marginal Revolution, April 19, 2018)〕

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