●Tyler Cowen, “How hot did you say it was?”(Marginal Revolution, July 19, 2012)
実のところ、こと気温に関しては、「現実」と「認識」との間には何らのつながりも見出せない。横軸に現実の気温(その人が暮らす地域の平均気温 [1] 訳注;正確には、その地域の「過去3年間の平均気温」と「過去30年間の平均気温」の差)をとって、縦軸に気温に関する人々の認識――平均気温が上がっていると考えるか、下がっていると考えるか、変わりがないと考えるか――をとると、水平な直線が描かれるのだ。統計的な手法を使った分析によると、現実の気温は人々の認識にほとんど影響を及ぼしていないことが見出されたのである。〔学歴が高い人ほど、平均気温が上がっていると考える傾向が強く、それゆえ〕「教育」は現実と認識のギャップを埋める方向に働くが、その効果の大きさは、「政治的なイデオロギー」(保守/リベラル) [2] 訳注;保守的な傾向が強い人ほど、平均気温は上がっていないと考える傾向にあるとの結果が得られている。や「文化的な価値観」[3] … Continue readingが(気温に関する)人々の認識に及ぼす効果の大きさに比べると劣る。
「文化的な価値観」は、気温に関する人々の認識に対して予想される通りの効果を持っている。個人主義者――個人の自由を侵害するとの理由で、環境規制に反対しがちな人――は、自分が暮らす地域の気温が現実に上がっていようがそうでなかろうが、その地域の平均気温は上がっていないと考えがちな一方で、 ゴリゴリの平等主義者は、自分が暮らす地域の平均気温は上がっていると考えがちなのである。
以上の話が当てはまるのはあくまでも「気温」に関してであって、「干ばつ」や「洪水」には当てはまらないようだ。記事の全文はこちら。記事で紹介されている論文はこちら。情報を寄せてくれた Michael Rosenwald と Scott Duke Kominers の二人に感謝。
References
↑1 | 訳注;正確には、その地域の「過去3年間の平均気温」と「過去30年間の平均気温」の差 |
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↑2 | 訳注;保守的な傾向が強い人ほど、平均気温は上がっていないと考える傾向にあるとの結果が得られている。 |
↑3 | 訳注;メアリー・ダグラスのgrid-group理論に依拠して各人の「文化的な価値観」が測られている。具体的には、個人主義者/平等主義者/階層主義者/運命論者の4タイプに類型化されている。 |