ブライアン・カプラン(Bryan Caplan)がランチでの会話を要約している。
大学(ジョージ・メイソン大学)でのランチの時間に、二人の経済学者(A氏&B氏)が財布にどれくらい現金を入れておくべきか(現金をどれくらい持ち歩くべきか)をめぐって意見を戦わせた。A氏が持ち歩いている現金は、ほんの少しだけ。クレジットカードで基本的に何でも買えるからというのがその理由だ。B氏はというと、現金をたくさん持ち歩いている。現金を手元に持っているせいで得られなくなる金利なんて無に等しいし、貴重な時間をできるだけ無駄にしたくない(現金を持ち歩いていたら時間を節約できる)というのがその理由だ。
あなたは、どちらに肩入れするだろうか? その理由は? 「時間の価値」および「現金を手元に持っているせいで得られなくなる金利」の具体的な計算結果もお待ちしている。
私の考えはシンプルだ。何らかの職に就いていて(例えば、「経済学者」として生計を立てていて)、安全な郊外に住まいがあるようなら、現金をたくさん持ち歩くべきだ。そんなに頻繁に使うつもりがなくても。 カプランみたいなタイプの経済学者――A氏――の言い分によると、世間の人たちは、金銭的な機会費用(現金を手元に持っているせいで得られなくなる金利)には敏感な一方で、時間の機会費用(現金を持ち歩いているおかげで可能になる時間の節約)には鈍感だという。そういうバイアスがあるせいで、世間の人たちは現金をあまり持ち歩かないのだという。クレジットカードで払うよりも現金で払うほうがお会計が早く済むことも時にはあるのだ。現金をたくさん持ち歩くようにしたら、ATMに足を運ぶ回数を減らせるのだ。コンビニとか他行のATMでお金をおろす時にかかる手数料を節約できるのだ。キャッシュレス社会がそのうちやってくるかもしれないが、先の話だ。まだその時じゃないのに、先走りする必要はないのだ。
こちらのエントリー――題して「テニスボール問題」――でも関連する話題を取り上げているので、あわせて参照されたい。
追記:グレッグ・マンキュー(Greg Mankiw)も参戦だ。現金をもっと持ち歩くべし、というのがマンキューの言い分だ。
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ストックホルムでは、キャッシュレス化(カード払い)が物乞いにも浸透し始めている。
こちらの記事より。テーマは、現金の利用に伴って発生するコストの高さであり、現金の保管に伴って発生するコストの高さだ。
タフツ大学の研究チームの調査(pdf)によると、現金の利用に伴って発生するコストは、アメリカの場合だと年間で2000億ドル近くに達するという。一人当たりに換算すると、およそ637ドルだ。現金の回収、勘定、輸送に要するコストだけでなく、ATMでお金をおろす時にかかる手数料も含まれている。ちなみに、同調査では、アメリカ人がATMでお金をおろすために平均でどれだけの時間を費やしているかも明らかにされている。年間で5時間半というのがその答えだ。現金の利用には、不便な面があれこれ付きまとうのだ。
〔原文:“How much cash should you carry?”(Marginal Revolution, September 4, 2007)/“Sweden fact of the day, and the high costs of cash”(Marginal Revolution, March 10, 2014)〕