ファビオ・ロハス 「ハッカーに死を!」(2004年5月27日)

●Fabio Rojas, “Death to the Hackers!”(Marginal Revolution, May 27, 2004)


スティーヴン・ランズバーグ(Steven Landsburg)が『スレート』で連載しているこちらのコラム [1] … Continue readingによると、殺人者を死刑にすることで防げる被害の額〔高く見積もって、1億ドル〕 [2] … Continue readingは、あちこちで猛威を振るうコンピュータウイルスの作者を死刑にすることで防げる被害の額〔年間500億ドル〕よりも小さいとのこと。ランズバーグの指摘が正しいとすると、切り裂きジャックを電気椅子送りにするのなら、ウルケル(コンピュータウイルスの一種)の作者も死刑台に送れって話になる。

別の言い方をすると、身の安全が確保される(殺人事件の被害者にならないで済む)ことで得られる便益の額(身の安全が確保されるのと引き換えに、世の人々が支払ってもいいと思う金額)よりも、財産権の侵害が防がれる(コンピュータウイルスに感染しないで済む)ことで得られる便益の額(財産権の侵害が防がれるのと引き換えに、世の人々が支払ってもいいと思う金額)の方が大きいということになる。ランズバーグによると、「犯罪の抑止」は市場が苦手とする分野だから政府がその代わりを、とのこと。

ランズバーグが見逃していることがある。人間というのは、被害が分散するケース(大多数のパソコンがコンピュータウイルスに感染して、1時間くらいメールの不具合が続く)よりも、被害が集中するケース(一人の命が奪われる)の方を気に掛けるものなのだ。おそらくは本能的に。死刑執行に伴う便益とコストを秤(はかり)にかけると、殺人者を死刑にするよりも、コンピュータウイルスの作者を死刑にする方が得策ですよと伝えても、人間の本能には打ち勝てないだろう。

References

References
1 訳注1;このコラムは、スティーヴン・ランズバーグ(著)/清宮真理(訳)『ランズバーグ先生の型破りな知恵』(バジリコ、2010年)にも収録されている(pp. 233~237)。
2 訳注2;殺人者を死刑にすることで防げる被害の額は、一回の死刑執行により10件の殺人が抑止される(10人の命が救われる)という推計結果と、一人あたりの「命の価値」が1,000万ドルという推計結果を加味した上で算出されている。
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