政治的な党派は,それぞれに,自分たちが優位に立てる論点を必要としてる.バイデンのもとで雇用市場は信じられないほどの堅調が続いているので,各種の右派は自分たちに「ちがうちがう,ホントは物事は酷いことになってるんだ」と言い聞かせるための理由を必要としている.そういうお得意の論点のひとつが,これだ――「雇用はみんな外国人にもっていかれているし,アメリカ人は移民に取って代わられている.」
ひどく誤解を招くグラフについては,つねづねみんなに注意喚起してる.上のグラフも,まさにそういうやつだ.このグラフは,以前の記事で誤りを論じてきた.左右に別々の軸を使うことで,アメリカ生まれの人たちの雇用の減少が,外国生まれの人たちの雇用の増加よりもずっとずっと小さいってことが見えなくなってしまっている.というか,アメリカ生まれの人たちの雇用がわずかに減少しているのすら,ひとえに,ベビーブーマー世代の大量退職によるものだ――アメリカ生まれの人たちの雇用率は,実のところ上昇している.それも,いままでで最高水準に近い率に達している.
でも,なんと,これですら悲観的すぎるんだよね.ハミルトン・プロジェクトのウェンディ・エーデルバーグとテラ・ワトソンが見出しているように,公式のデータではおそらくアメリカ生まれの人たちの雇用増加が実態よりも大幅に少なく数えられている:
我々の推定では,アメリカ生まれの人々の雇用は,2023年に約 74万件増えている.これと対照的に,人口動態調査 (CPS) で公表されたデータでは, 19万件の減少が示されている(…).我々は,人口動態調査で公表されたデータでは2023年1月から2024年1月までの人口増加が顕著に過小評価されており,したがって同年の雇用増加も両方の集団に関して過小評価されていることを見出した.
で,そのグラフがこちらだ:
ようするになにがあったかというと,政府は最初に雇用率を計算して,それから雇用率に人口を掛けて全体の雇用数を算出しているんだけど,政府は2023年にアメリカ生まれの人口の増加を過小に推計していたために,アメリカ生まれの人たちの雇用数も減少したという結論を出してしまったんだよ.人口の推計を修正すると,実はアメリカ生まれの人たちの雇用は2023年に顕著に増加していたのが判明した.
というわけで,「アメリカ経済の雇用の伸びはぜんぶ移民に流れてしまっている」という右派お得意の論点は,たんなる間違いだ.アメリカ生まれのアメリカ人は雇用市場でうまくやってる.
[Noah Smith, “No, immigrants did not take American jobs,” Noahpinion, August 18, 2024]