タイラー・コーエン 「ヨーロッパは買い被られている?」(2009年8月24日)

●Tyler Cowen, “Is it America or Europe which is overrated?”(Marginal Revolution, August 24, 2009)


ブライアン・カプラン(Bryan Caplan)の言い分によると、ヨーロッパは買い被(かぶ)られているとのこと。それなりに分量があるエントリーだが、ほんの一部だけ引用しておこう。

・・・(略)・・・アメリカ国内の郊外と同じくらい快適で便利な場所で暮らしているヨーロッパ人なんて、ほとんどいない。アメリカ国内の郊外と言えば、家も広々としていて、車もでっかい。大規模小売店もチェーンのレストランも近くにあって、(サウスパークの表現を借りると)「昼夜を問わず、駐車スペースがたっぷり」なのだ。

カプランによると、ヨーロッパを旅してきたアメリカ人がヨーロッパをやたらに高く評価するのは、アメリカの方が平均年収が高いからだ――それゆえに、金に糸目をつけずに、ヨーロッパのいい所をあちこち見て回れるからだ――という。カプランがどの購買力平価(PPP)を使って収入を比較しているのかは不明だが、それはさておいて、カプランの意見にはもっと根本的なところで同意しかねる。幼い子を持つ37歳の人間――というのは、カプランのことだけれど――にとっては、ヨーロッパよりもアメリカの方が快適に暮らせるというのがカプランの言い分で、頷(うなず)けるような理由がいくつか挙げられている。アメリカの方が居住スペースも広いし、買い物も簡単だし等々。それはそうかもしれないが、老人にとっては、アメリカよりも西ヨーロッパ(の多くの地域)の方が暮らしやすいだろう。その理由の一部を挙げると、西ヨーロッパであれば、自分で車を運転する必要もそれほどないし、息子や娘が近くに住んでいる可能性も高いし、老人を敬う気持ちも(アメリカよりは)強い。安全面とか医療面とかを考慮すると、子供にとってもおそらく西ヨーロッパの方が暮らしやすいだろう。

私なりの考えを述べさせてもらうと、ヨーロッパを旅してきたアメリカ人がヨーロッパを大いに高く評価する理由の一部は、過去から受け継がれてきた歴史ある建築物に魅せられたせいなんじゃないかと思う。アメリカ国内にある建物がどれもこれも戦後(第二次世界大戦後)になってすべて建て替えられていたとしても、アメリカという国の印象は大して変わらないだろう。それとは対照的に、ヨーロッパにある建物がどれもこれも戦後になってすべて建て替えられていたとしたら、ヨーロッパ(あるいは、ヨーロッパの政策や政治制度)に対するアメリカ人の尊敬の念は今ほど強くないだろう。フランスのリールだとかスペインだとかの現代建築のように、戦後になっても優れた建物が建築されているのは承知しているが、大半のアメリカ人にとっては、ヨーロッパで戦後になって建てられた建物のほとんどがゴミの山のように思えるだろう。

(追記)ミーガン・マクアドール(Megan McArdle)もコメントを加えている

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