John Cochraneはシカゴ大学ブースビジネススクール ファイナンス教授。株式市場、債券市場、外国為替市場など金融市場における価格形成、ボラティリティ、VCの利回り、流動性プレミアムの研究や株価と景気循環の関係など金融論および貨幣経済学を主な専門とする。カリフォルニア大学バークレー校よりPh. D. (経済学)取得。
John Cochrane, “Rajan to run the central bank of India“, The Grumpy Economist, August 6, 2013
私の同僚であるラグー・ラジャンがインド中央銀行総裁に任命されることになった。 Financial Times とReuters の記事を見てほしい。おめでとう、ラグー!
この決定に対する賛辞に二つばかり付け加えたい。
経済学の世界から中央銀行の総裁になるのは伝統的には金融政策の専門家だ。金利だとかインフレだとかそういったものを議論する人たちね。ところがラグーはファイナンスとバンキングについて研究してきた経済学者だ。かれの経歴を見ればわかるが、銀行がどのように機能しているかについて考察した素晴らしい論文を書いている。
そんな彼が中央銀行総裁に就任するのはちょうど良いタイミングなんだ。なぜなら各国の中央銀行はいまや危機を避けるためなどのためにバンキングと金融市場を理解しようと動き始めたところだからだ(あるいは人によっては、しばらくぶりに元の任務に戻っただけと言うだろう)。そしてこれらの分野について彼以上に明確にかつ多くのことを研究してきた人物をこの地球上に見つけることは難しい。
彼のルイージ・ジンガーレスとの人気の共著『セイヴィング キャピタリズム (Saving capitalism from the capitalists )』も示唆に富んでいる。うん、インドの(そして我々の多くが抱える)問題の中心は過剰な規制と腐敗にあることはラジャンも分かっている。でも、現在のシステムを機能不全に陥らせている強い政治的圧力があることも彼は理解している。中央銀行の総裁が直面している政治的圧力を理解し、抵抗できる人がいるとすれば、それはラグーだ。そして、彼ならインドのすべての問題を中央銀行が解決できるなんていう貨幣政策マジックや金融統制について考えようなんて思いもしないだろう。
彼はまた私が知りうる限り最も礼儀正しい人物であるが、同時に言うべきことは決して辞さない人物でもある。つまり、それは動きの遅い官僚機構を指揮するには私のような典型的に頓珍漢な学者よりもラグーははるかにうまく役割を果たすだろうってことだ。
グッドラック、ラグー。きっと君にはこれが必要だ。
FRBの総裁候補としてラグーが選択肢から消えたことが残念だと、ロイターが同様の見解を既に伝えている。