タイラー・コーエン 「母親の背を見て娘は育つ? ~お手本としての母親~」(2004年3月5日)

●Tyler Cowen, “Maternal role models”(Marginal Revolution, March 5, 2004)


・・・(略)・・・成長期に母親が外に働きに出ていた家庭で育った男児や女児たちが大人になってから就く職業の社会的地位の高さは、性別によって(兄弟姉妹の間で)そう大きくは違わない傾向にある。それとは対照的に、成長期に母親が外に働きに出ていなかったようだと――それゆえ、女児からすると働く上での同性のお手本が身近にいなかったようだと――、その家庭で育った男児や女児たちが大人になってから就く職業の社会的地位の高さに性別によって(兄弟姉妹の間で)かなりの違いが見られる。私が検証したデータは、次のような結果を示している。成長期に母親が外に働きに出ていなかった家庭で育った女児は、大学を卒業する確率が男児(兄ないしは弟)よりも15%程度低い傾向にある。それとは対照的に、成長期に母親が少なくとも1年間は外に働きに出ていた場合には、その家庭で育った女児と男児との間で大学を卒業する確率に統計的に有意な差(有意水準5%)は認められない。成長期に母親が働きに出ていたかどうかがその家庭で育った子供の将来に及ぼすインパクトをより鮮烈に伝えるデータもあわせて紹介しておこう。同じ家庭で育った兄弟姉妹の年収を学歴なり職業の社会的地位の高さなりといった変数にコントロールを加えた上で比較すると、女児が大人になってから稼ぐ年収は男児が大人になってから稼ぐ年収よりも5,000ドル近く少ない傾向にあるが、 成長期に母親が外に働きに出ていたかどうかを加味して検証すると、驚きのパターンが浮かび上がってくる。成長期に母親が外に働きに出ていたようなら、その家庭で育った女児と男児が大人になってから稼ぐ年収の差は4,500ドル近くにとどまる。その一方で、成長期に母親が外に働きに出ていなかったようだと、その家庭で育った女児と男児が大人になってから稼ぐ年収の差は8,000ドル以上にも及ぶのだ。

ドールトン・コンリー(Dalton Conley)の優れた一冊である『The Pecking Order: Which Siblings Succeed and Why』からの引用だ。同書についてはこちらのエントリーでも話題にしたことがあるので、あわせて参照されたい。

私なりに要点をまとめておくとしよう。母親が働いていると、娘は大人になってから息子(兄ないしは弟)に引けを取らない所得を稼ぐ可能性が高い。ワーキングマザー(外で働いているお母さん)は、そこまで罪悪感を覚える必要はないのだ。

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