〔前記事:ポール・ローマー「インフレーションに関するよい知らせ」(2022年12月14日)〕
消費者物価指数に関する1ヶ月前の投稿で、私は、インフレについてのデータは、多くの報道に示唆されているよりも良い状況であると主張しました。インフレ率が下落しているとき、政府関係者や報道が強調しがちな過去12ヶ月の平均値という指標は、現在のインフレ率から上方に偏りのある指標なのです。
先月書いた投稿では、私は、インフレとの戦いがまもなく終わりうることは想像に難くない、と言いました。12月のデータは、この楽観的な評価をさらに裏付けるものですが、いつ勝利を宣言すべきかという問題をより詳しく解明します。新しいインフレ率の目標はどうあるべきなのでしょうか。
更新されたCPIインフレ率のグラフ ー 全品目
この全品目の価格のグラフを、前回の投稿のグラフと比較してみてください。現在の月次インフレ率は、過去6ヶ月と過去12ヶ月の平均値を大きく下回っています。12月の結果を含めて更新すると、3つのレートはすべてさらに低下しました。
全品目指数:11月から12月への変化
12ヶ月: 7.1% → 6.4% 6ヶ月: 4.7% → 1.9% 1ヶ月: 1.2% → −1.0%
エネルギー価格の下落が、全品目物価指数の下落に大きく寄与しています。それ以外の品目では、12月のインフレ率は11月に比べて1%ポイントほど高くなっています。前回の投稿で強調したように、月次データにはノイズが含まれます。結果は上にも下にも振れるでしょう。とはいえ、食品とエネルギーを除く物価指数でみた場合でも、2022年の最後の3ヶ月間では、インフレ率が年率4%を下回っていたことは明らかです。
更新されたCPIインフレ率のグラフ ー 食品とエネルギーを除く物価指数
食品とエネルギーを除く指数:11月から12月への変化
12ヶ月: 6.0% → 5.7% 6ヶ月: 5.3% → 4.4% 1ヶ月: 2.4% → 3.6%
新しいインフレ率の目標値
金融危機の後、2%のインフレ目標は危険なほどに低いというコンセンサスがはっきりと存在したことを思い出してください。そのコンセンサスの背後にある推論の欠陥を特定した説得力のある議論、もしくはこうした〔2%のインフレ目標は危険なほどに低いという〕考えに沿った説得力に欠ける議論も、私は全く耳にしていません。今、世間では、金融危機はなかったことにしてもいいということになっているようです。
より好意的に解釈するならば、金融政策を研究する経済学者たちは、実質利子率が異常に低い時代は過ぎ去ったと確信しています。そして、2%のインフレ目標への回帰を支持する声を上げることは、恒久的な名目利子率の上昇という避けられない結末に移行するための、政治的に受け入れられる方法だと考えているのです。
〔原文:“More Good News on Inflation”(Paul Romer, Thursday, January 12, 2023)〕