●Tyler Cowen, “Only joking”(Marginal Revolution, December 20, 2011)
たいした話じゃないから、気にしないでほしい。
9頭のライオン、13頭のキリン、30頭近くに及ぶシマウマの群れ。オランダのティルブルフ市の近くにあるサファリパーク「ベークセベルゲン」(Beekse Bergen)が誇る動物たちだ。ところで、そんなご自慢の動物たちよりもずっと物珍しい動物の姿を園内で目撃したとの情報が今月に入って相次いで寄せられている。絶滅したと思われていたその「動物」の名は、ギルダー。オランダの旧通貨である。
今月(2011年12月)のはじめに開催されたEUサミットと連携したプロモーションの一環として、一週間に限って旧通貨での入場料の支払いを受け付けることが発表されると、園内のレジに大量のギルダーがなだれ込んできた。入場券売り場では、「倹約家」の地元の人たちがコートのポケットを漁っている。その手には色褪せた10ギルダー紙幣が握られ、ポケットの中ではギルダー銀貨がジャラジャラ鳴っている。
「ベークセベルゲン」の親会社にあたる「リベーマ」(Libéma)のスポークスマンによると、今回のプロモーションは、EUサミットというお祭り騒ぎに乗じた「コミカルな注目集め」(軽い冗談)に過ぎないという。しかしながら、どうやらそれだけにはとどまらないようだ。オランダ国内で広がるユーロへの幻滅に加えて、旧通貨(ギルダー)へのノスタルジー(懐旧の念)に巧みに付け込もうとしているところもあるようなのだ。
と報じているのは、フィナンシャル・タイムズ紙。
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●Tyler Cowen, “Loan markets in everything”(Marginal Revolution, November 10, 2010)
インドにある辺鄙(へんぴ)な村で、これまでにない金融の仕組みが思い付かれた。それを発案したのは、アラーハーバードから70キロ離れているコラワン村に住む女性たち。取り扱われるのは、主に「ヤギ」。ヤギを預かり、ヤギを貸し付けるのだ。
現地のコーディネーターを務めるスーバダール・シン氏は、PTI通信の取材に対して次のように答えている。「コラワン村に住んでいるプレマさんと彼女の友人たちが、ヤギを主力商品とした銀行を立ち上げたんです」。
コラワン村は、ミルザープル市にある不毛の地だ。住人の大半は、岩を砕いて生計を立てている。
「奥さんたちは、旦那さんが岩を砕くのを手伝うだけでなく、2~3頭のヤギを育てて収入の足しにしています」とシン氏。
シン氏は続ける。「このあたりはヤギを育てるのにはもってこいなんですが、ヤギをビジネスに本格的に利用しようとする試みはこれまでに一度もありませんでしたね」。
プレマ氏は、立ち上げたばかりの銀行について次のように説明した。「ヤギの飼育に専念したいと考えている女性たちにヤギを貸し付けるんです。ヤギは大体2~3頭の子供を産むんですが、私たちが貸し付けたヤギが子供を産んだら、そのうちの一頭を私たちの銀行に預けてもらうんです」。
銀行の管理下にあるヤギは、毎週欠かさず健康をチェックするという。
「貸し付け用のヤギが死んでしまったら、どこかから買い入れて補充するか、銀行に預けられているヤギを貸し付け用に回す予定です。その時々で柔軟に対応するつもりです」とプレマ氏は語る。
シン氏によると、銀行が立ち上げられてからまだ半年しか経っていないにもかかわらず、これまでに6ヶ所以上の村から40名を超す女性が会員として参加しているという。
「プレマさんたちの新事業は、産声を上げたばかりの段階に過ぎませんが、会員の数がこれからますます増える可能性もあります。慎(つつ)ましい暮らしを余儀なくされている女性たちの収入と生計を支える強力な後ろ盾になってくれるのではないかと期待しているんです」とシン氏は語る。
「私たちの銀行の会員一人ひとりが少なくとも20頭のヤギを持てるようになって、経済的に自立できるようにするのが目標なんです」。プレマ氏は、そのように語った。
全文はこちら。ポール・シェイ(Paul Hsieh)経由で知ったニュースだ。ジェフリー・ウィリアムズ(Jeffrey Williams)が聞いたら、きっと喜ぶに違いない。