ダイアン・コイル 「ホッブズと『哲学の町』」(2011年1月3日)

ホッブズは、経済学者にとってとりわけ興味深い哲学者の一人だ。なぜなら、「利己心」を人間の行動の根底に据えた先駆者こそがホッブズだったからだ。
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(イングランドのウィルトシャー州にある)マームズベリーがイギリスにおける「哲学の町」を自称していて、(マームズベリー近郊のウェストポートで生まれた)ホッブズを称えるお祭りを毎年開催しているらしい。その名も、

『Enlightenment Enightenment』 (5月14日開催)
――21世紀に啓蒙をもたらすために、夜を徹して開催

詳しい理由は言うまでもないだろうが、いい響きだ [1] 訳注;コイルのブログのタイトルが「The Enlightened Economist」。「啓蒙」という同じ表現を冠しているので、親近感が湧いているのだろう。

ホッブズは、経済学者にとってとりわけ興味深い哲学者の一人だ。なぜなら、「利己心」を人間の行動の根底に据えた先駆者こそがホッブズだったからだ――どういう「ものの考え方」に立つかによって、「利己心」を人間の行動の根底に据えたことを称える人もいれば、非難する人もいることだろう――。「ホッブズの人間観は、あまりに極端で現実離れしている」なんて批判されることがあるが、ホッブズの言い分をいくらか誇張して批判している例がしばしば目につくように思う(この件をめぐる論争については、こちらでうまくまとめられている)。ホッブズの著作の多くはネットで簡単に読めるので――例えば、『リヴァイアサン』はプロジェクト・グーテンベルクで読める――、時間がある時にでも目を通してみて、ホッブズに対する批判の当否について自分なりに判断してもらいたいと思う。

ホッブズの思想が現代にも通用するかとなると、よくわからないというのが正直なところだ。ホッブズは、いくつもの重大なアイデアの生み手として――例えば、国家(state)と市民社会(civil society)を峻別(しゅんべつ)したり――歴史的に見て重要な存在なのは疑いないが、彼も時代の人である。混乱に見舞われ、戦争によってボロボロになった17世紀のイギリスに生きた人である。ホッブズが経験した混乱は、我々が生きる21世紀を襲う混乱とは別物なのだ。


〔原文:“Philosophy Town”(The Enlightened Economist, January 3, 2011)〕

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1 訳注;コイルのブログのタイトルが「The Enlightened Economist」。「啓蒙」という同じ表現を冠しているので、親近感が湧いているのだろう。
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