ティム・ハーフォード 「クリスマスにまつわるエトセトラ ~陰鬱な科学が送るアドバイス(その3)~」(2005年12月22日)

●Tim Harford, “Seasonal advice from the dismal science, Part 3 of 3”(Marginal Revolution, December 22, 2005)/(その1)の拙訳はこちら、(その2)の拙訳はこちら


*来年のクリスマスギフトは、来週ではなく、来年の12月に買うべし

これから月末にかけて、歳末セールがあちこちで開催されることになる。大売出しの垂れ幕についつい引き寄せられて、まとめ買いの誘惑(来年の分のクリスマスギフトもまとめて買っておこうという誘惑)に駆られてしまうことだろう。しかし、踏ん張って欲しい。格安で商品を手に入れることができたとしても、それと引き換えに、時とともにかさむコストを負担しなくてはならないのだ。クレジットカードでお買い物すれば、利息の支払いが付いてくるし、商品を保管するのもタダじゃない。それより何より悪いことには、(来年のクリスマスに向けて、あらかじめ商品を買っておくことで)柔軟性(融通性)が失われてしまうのだ。慎重に商品を選んだとしても、来年のクリスマスまでに友人の好みが変わってしまえば――友人が友人じゃなくなってしまうことだってある――、せっかく買っておいた商品を捨ててしまわなければならなくなる場合も出てくるのだ。柔軟性というのは、尊いものなのだ。尊いもののために犠牲を払って [1] 訳注;安くで商品を購入できる機会を見過ごす、という意味。 何が悪いというのか。


*新年の抱負をより確実に達成するために、先手を打っておくべし

「ダイエット(減量)というのは、自分自身との知恵比べと言っても過言ではない」。そう指摘したのは、トマス・シェリング(Thomas Schelling)だ。体型の変化に敏感な「ダイエット氏」と、意志の弱い――隙さえあれば、すぐにチョコレートに手を伸ばす――「大食漢氏」とが、一人の人間の内部で主導権争いをしている。そう言えるわけだ。初歩的なゲーム理論が示唆するところでは、「ダイエット氏」は、戦略的なプレコミットメント(strategic pre-commitment)を利用することで、「大食漢氏」とのバトルを自らに有利に運ぶことができる。プレコミットメントの例としては、友人との次のような賭けが考えられるだろう。「目標;20ポンド痩せる。目標を達成できなければ、チャリティに200ドルを寄付する」。あるいは、こんな賭けも考えられるだろう。「目標;10ポンド痩せる。目標を達成できなければ、マーサ・スチュワート(というのは一例。あなたが嫌いな人物なら、誰でも可)に200ドルを寄付する」。


*アラン・グリーンスパンを新たなサンタクロースに任命しよう

「サンタは、全部お見通し。だから、お願い。いい子にしててね。」(“He knows if you’ve been bad or good, so be good for goodness’ sake.”)。ヘヴン・ギレスピー(Haven Gillespie)の有名な歌詞 [2] 訳注;”Santa Claus Is Coming To Town“(「サンタが街にやってくる」) は、サンタの正体を仄めかしている。脱脂綿のヒゲをはがすと、そこに現れるのは・・・クリント・イーストウッド(Clint Eastwood)の顔!・・・なんて冗談はさておいて、サンタは、子供が可愛くて仕方ない。そのため、悪い子に予告通りに罰を課す [3] 訳注;罰を課す=悪い子にはプレゼントをあげない なんてできっこないってことは誰もが知るところ。もちろん、悪い子も知ってる。親の脅し [4] 訳注;「いい子にしてないと、サンタさんからプレゼント貰えないわよ。それでもいいの?」 が子供から無視されるのもそのせいだ。ノーベル経済学賞受賞者のフィン・キドランド(Finn Kydland)とエドワード・プレスコット(Edward Prescott)の二人は、脅し(や約束)の信憑性(credibility)にまつわる問題を見通していた。とは言っても、彼らが研究の対象としたのは、枕元の靴下ではなく、金融政策だった。しかし、原理は同じだ。インフレが退治されたのは、「厳格な」人物がFRB議長の座に招かれたからだった。ポール・ボルカー(Paul Volcker)とか、アラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)とかね。グリーンスパンもあと少しでFRB議長の座を退くが、彼に次に就いてもらうべきポストは明らかだろう。サンタクロースだ。優しくて愚かなあの老人に代わって、グリーンスパンにサンタを務めてもらうのだ。そうなれば、子供たちは、いい子でなきゃいけないと知って、いい子でいようと努めることだろう [5] … Continue reading。その結果、みんなの枕元の靴下には、サンタからのプレゼントが届けられることだろう。


メリー・クリスマス!

References

References
1 訳注;安くで商品を購入できる機会を見過ごす、という意味。
2 訳注;”Santa Claus Is Coming To Town“(「サンタが街にやってくる」)
3 訳注;罰を課す=悪い子にはプレゼントをあげない
4 訳注;「いい子にしてないと、サンタさんからプレゼント貰えないわよ。それでもいいの?」
5 訳注;その理由は、「厳格な」グリーンスパンサンタの脅し(「悪い子にはプレゼントをあげないぞ」)は、これまでのサンタの脅しとは違って、信憑性が高く、「いい子にしてないと、プレゼントがもらえない」と子供たちの間で広く信じられるようになるため。
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