マーク・ソーマ 「ピケティの慨嘆 ~ヨーロッパはユーロ圏という名のモンスターを生み出してしまったのです~」(2015年3月10日)

●Mark Thoma, “Thomas Piketty on the Euro Zone: ‘We Have Created a Monster’”(Economist’s View, March 10, 2015)


トマ・ピケティ(Thomas Piketty)がドイツのシュピーゲル誌のインタビューに応じている。そのほんの一部を以下に引用しておこう。

Thomas Piketty on the Euro Zone: ‘We Have Created a Monster’”, Interview by Julia Amalia Heyer&Christoph Pauly:

シュピーゲル誌: ・・・(略)・・・融通が利かない政治的な手段(impenetrable political instruments)と仰いましたが、どういう意味なのでしょうか?

ピケティ:今のところ、計19カ国が共通通貨であるユーロを採用しています。しかしながら、それぞれの国で税制も違いますし、みんなで協調して財政政策が摺(す)り合わされた試しもありません。うまくいきようがないのです。ヨーロッパは、ユーロ圏という名のモンスターを生み出してしまったのです。ユーロという共通通貨が導入されるまでは、どの国も為替レートの減価を通じて価格競争力を高めることができました。しかしながら、ユーロ圏の一員になってしまったせいで、ギリシャは為替レートの減価という手段――その有効性が立証されている手段――にもう頼れなくなってしまったのです。

シュピーゲル誌:何だか(ギリシャの)アレクシス・ツィプラス首相を彷彿とさせますね。ツィプラス首相の言い分によると、ギリシャ政府は債務を返済する必要はないそうです。ギリシャに落ち度があるわけではないからだそうです。

ピケティ:私は、スィリザの党員でもありませんし、スィリザを支持しているわけでもありません。ヨーロッパがどういう状況に置かれているかを分析しようと試みているだけにすぎません。そして、ヨーロッパの状況を観察しているうちに明らかになってきたことがあります。経済成長なくして財政赤字を削減することはできない、というのがそれです。経済が成長しないと、財政赤字を減らそうとしてもうまくいかないんです。ここで、是非とも記憶しておくべきことがあります。ドイツ(政府)もフランス(政府)も第二次世界大戦が終わった直後(1945年)の時点でかなりの規模に上る債務を抱えていましたが、どちらの国もその債務を完済していないのです。そうであるにもかかわらず、南欧諸国に対して債務を返済せよと迫っているのがこの両国なのです。「歴史の健忘症」とはまさにこのことです。それに伴って、悲惨な結果が招かれようとしているのです。

シュピーゲル誌:アテネにある政府(ギリシャ政府)は何十年にも及ぶ不始末に自分でけりをつける必要はない。周りがその尻拭いをすべきだというわけですか?

ピケティ:ヨーロッパに住む若者たちのことを考えるべきです。彼らの多くは、職を見つけるのが極めて困難な状況に置かれています。「申し訳ないけれど、君たちが仕事を見つけられないのは、上の世代の人たち――君たちの親や祖父母――のせいなんだ」って若者たちに伝えるべきでしょうか? 世代間の連座(集団的懲罰)をヨーロッパに持ち込みたいとでも? ナショナリズムに支えられたその種のエゴイズムこそが何にも増して私をうろたえさせるのです。

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