このまとめ記事のシリーズ23回目で,中華人民共和国に批判的な言論を TikTok が抑圧しているのを示すとてもしっかりした証拠に触れておいた:
ネットワーク伝播研究所 (NCRI) による新研究で,[中国がプロパガンダ目的に TikTok を利用しているという事態は]すでに起きており,しかも非常に実質のあるかたちでなされていることが裏付けられた.Instagram と TikTok に投稿されたショート動画のハッシュタグを比較することで,どの話題を TikTok のアルゴリズムが押し上げたり抑圧したりしているのかを把握できる(…).一般的な政治的話題(BLM,トランプ,中絶など)に関わるハッシュタグは Instagram に比べて 約 38% の人気を TikTok では得ている.ところが,中国共産党にとって差し障りのある話題の――たとえば天安門事件,香港の抗議運動,一斉検挙などの――ハッシュタグは,Instagram に比べてわずか 1% の出現数にとどまっている.この相違は実に驚嘆すべきものだ(…).全体として,このパターンは見過ごしようがない――中国共産党が人々に語らせたがらない話題は,どれひとつをとっても,TikTok で抑圧されている.
さて,今度はネットワーク伝播研究所からこの以前の結果を補完する研究が出てきた.使われているのは前と違う手法だけれど,まったく同じことが見出されている:
中国の人権侵害を非難したり否定的に描いたりしている動画は,他の共同ネットワークに比べて TikTok で見つけにくいことが新研究で明らかになった(…).ラトガース大学のネットワーク伝播研究所の新研究によれば,アメリカの TikTok ユーザーが「天安門」「チベット」「ウイグル」といった単語を検索すると――中国共産党のプロパガンダで広く使われている単語を検索すると――,YouTube や Instagram で全く同じ検索をした場合と比べて「反中国」コンテンツが見つかりにくい.
ByteDance Ltd. 所有の TikTok,Meta Platforms Inc. の Instagram,Alphabet Inc. の YouTube で 24 のアカウントをアナリストたちは作成し,ソーシャルメディアに登録したアメリカ人ティーンエイジャーたちの体験を再現した.中国の人権侵害にしばしば関連しているキーワードを検索すると,Instagram や YouTube と比べて,TikTok のアルゴリズムでは肯定的・中立的・無関係なコンテンツが表示される割合が高いことを同研究は見出した.
TikTok 側は憤慨して,中国政府がアルゴリズムを人為的に操作していると証拠が示しているのを否認したけれど,その否認の言はあやふやで,説明不足だった.前回の研究から今回の研究が出るまでのあいだに,中国の誰かが TikTok のアルゴリズムを操作して中国共産党に対するアメリカ人の批判を 検閲しているのがはっきりした.
アメリカのソーシャルメディア・プラットフォームを外国政府が検閲することがいったいどうして「言論の自由」に該当するのか,ぼくにはよくわからない.
※関連記事: ノア・スミス「うん,もちろん TikTok は禁止すべきだよ」(2023年3月20日)
[Noah Smith, “TikTok is still suppressing speech,” Noahpinion, August 26, 2024]