「買う」という行為それ自体を楽しんだり、折にふれて贅沢気分を味わってウットリしたいというのが人の性(さが)なんだろう。
消費者がお金をかけずに楽しもうとしている結果として、お手頃な価格帯の屋外用テーブルセットやバーベキューコンロがよく売れているという。不景気の最中に売り上げを伸ばしている商品の中には、(ウォルマートで店長を務めている)スプレーグ氏もなぜ売れているのか理解に苦しむものもあるという。例えば、5ドルの白い便座がそれだ。「奇妙に思われるかもしれませんが、在庫を確保できないほど売れてるんです」とスプレーグ氏は語る。失業して家に籠(こも)りがちな人たちが自宅のトイレを飾るための一環として買っているのではないかというのがスプレーグ氏なりの推測だ。お金をかけずにトイレを飾るために、(ホームセンターの)ホーム・デポでそれなりに値が張る便座を買う代わりに、ウォルマートで5ドルで便座を手に入れているというわけだ。
全文はこちら。TheBrowser 経由で知った記事だ。ところで、「白い」便座を欲しがる人がいるのはどうしてなんだろうね?
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ニア・ジェイモヴィッチ(Nir Jaimovich)&セルジオ・レベロ(Sergio Rebelo)&アーリーン・ウォン(Arlene Wong)の三人の共著論文のアブストラクト(要旨)より。
本稿では、まずはじめに、二つの事実を確認する。景気が悪くなると、消費者が購入する財やサービスの質を下げて倹約を試みるというのが一つ目の事実である。高品質の財の方が低品質の財よりも、生産するのにより多くの人手を要するというのが二つ目の事実である。二つ目の事実を踏まえると、消費者が倹約志向になったら――(生産するのに多くの人手を要する)高品質の財を買う代わりに、(生産するのにそこまで人手を要しない)低品質の財を買うようになったら――、労働需要が減ってしまうことになる。景気の落ち込みがさらに深まるのだ。本稿での実証分析の結果によると、アメリカでの近年の景気後退局面で生じた雇用の減少のかなりの部分が「消費者の倹約志向」によって引き起こされている可能性が見出されている。さらには、消費者の倹約志向(消費者が購入する財の質を切り替える可能性)を組み込んだ二種類の景気循環モデルの分析結果によると、消費者の倹約志向のせいで実物ショックや貨幣ショックの影響が増幅されることが見出されている。
つまりは、景気が悪い時には、そこそこ値が張る商品を作っている会社に補助金を支給してその商品の小売価格を抑える一方で、リサイクルショップに高い税金を課してリサイクル品の小売価格を吊り上げるべし・・・ってことだろうか?
〔原文:“Countercyclical assets at Wal-Mart”(Marginal Revolution, May 6, 2009)/“Trading down and the business cycle”(Marginal Revolution, September 8, 2015)〕