タイラー・コーエン 「我は『ラムス主義者』なり ~空間、記憶、乱雑さ~」(2005年9月22日)/「乱雑さの擁護」(2007年1月3日)

●Tyler Cowen, “Tyler Cowen, Ramist”(Marginal Revolution, September 22, 2005) [1]訳注;「ラムス主義者」(Ramist)というのは、ペトルス・ラムス(Petrus … Continue reading


空間(場所)と結び付けて記憶を整理するのが私の癖だ。CDのコレクションは何千枚にも上るが、何があるか一枚残らず覚えている。しかしながら、iTunesに入っている曲となると、その数はそんなに多くないのに、まったく思い出せない。大学の研究室であれ、自宅であれ、床一面に論文が散らばっているが、どこに何があるか覚えているし、その雑然とした光景に意味を見出すこともできる。私の身の回りにある「乱雑さ」は、作り替えるのが不可能な情報を含んでいるのだ。

ありがたいことに、私の妻は、寛大な心の持ち主だ [2] 訳注;「散らかり放題じゃない。いい加減片付けなさいよ」とガミガミ言わないし、勝手に片付けたりしない、という意味。。私が一番恐いのは、仕事熱心過ぎる(整理整頓に異常な情熱を燃やす)お手伝いさん(家政婦)だ。

住まいが今よりも狭かったとしたら、私の精神世界はずっと貧相な仕上がりになっていたろう。車であちこちドライブするのが好きなのも、海の近くには住みたくないのも、空間(場所)と結び付けられた記憶を溜め込んで精神世界を少しでも豊かにするためなのだ。

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●Tyler Cowen, “In Defense of Mess”(Marginal Revolution, January 3, 2007)


ノーベル経済学賞の受賞者であり、シカゴ大学の経済学部で教授を務めているロバート・フォーゲル(Robert Fogel)は、目の前にある机に本が高く積み上がっているのに気付くと、座っている椅子の背後に別の机を用意した。かくして、二つの机の間で、本の積み上げ競争(散らかし競争)がはじまったのである。

A Perfect Mess: The Hidden Benefits of Disorder』(邦訳『だらしない人ほどうまくいく』)からの引用だ。著者は、エリック・エイブラハムソン(Eric Abrahamson)&デイヴィッド・フリードマン(David Freedman)。乱雑さ(混沌、だらしなさ)の擁護論が展開されている面白い一冊だ。私もこちらのエントリーで同様の話題について取り上げているので、あわせて参照されたい。

References

References
1 訳注;「ラムス主義者」(Ramist)というのは、ペトルス・ラムス(Petrus Ramus)の模倣者という意味。ここでは、記憶術の一種である「場所法」の実践者という意味が込められている。
2 訳注;「散らかり放題じゃない。いい加減片付けなさいよ」とガミガミ言わないし、勝手に片付けたりしない、という意味。
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