●Alex Tabarrok, “Venezuelan Arbitrage”(Marginal Revolution, September 24, 2013)
出発地がベネズエラの飛行機のチケット(航空券)。予約が殺到して出発日の何ヶ月も前に完売するのに、出発当日になると飛行機の席が半分くらいしか埋まっていないことが多いという。その理由は? ベネズエラ政府は固定相場制を採用していて、「1ドル=6.3ボリバル」が公定の相場になっている(2013年9月時点)。しかしながら、闇市場で1ドルを手に入れようとすると、例えば42ボリバルを払わないといけない(「1ドル=42ボリバル」が闇の相場)。ベネズエラ国内でボリバルとドルを公定の相場で交換できる特権はごく限られた一部の人間にしか認められていないが、例外がある。本物の航空券を持っていれば、誰でも公定の相場でボリバルとドルを交換できるのだ [1] 訳注;海外旅行に出かける出国予定者に限って、公定の相場での両替が認められている、という意味。。航空会社に予約を入れて、航空券を手に入れる。次に、航空券を携えて、公定の相場でボリバルとドルを交換する(ボリバルを手放して、ドルを手に入れる)。そして、闇市場でドルとボリバルを交換する(ドルを売って、それと引き換えにボリバルを手に入れる)。すると、あら不思議。あっという間にボリバルが増殖している、というわけだ [2] … Continue reading。
ロイターの報道に耳を傾けるとしよう。
「このマジック(公定の相場と闇の相場の乖離に付け込んだ裁定取引)のおかげで、海外に無料で旅行することも可能です」と語るのは、地元の経済学者であるアンヘル・ガルシア・バンチ。
公定の相場と闇の相場の乖離に付け込んで「裁定取引」――ベネズエラ国内では、(スペイン語で)“el raspao”と呼ばれている。「かき集め」という意味だ――に乗り出せば、大儲けできるのだ。
飛行機に乗って海外に行き、その地でクレジットカードのキャッシング機能を使ってドルを引き出す(借りる)というケースも珍しくないという。旅先で買い物をするためではない。そのままドルをベネズエラに持ち帰ってきて、闇市場でボリバルと交換するのだ。公定の相場で交換する場合の7倍近くに上る額のボリバルと。
裁定取引を通じて得られる儲けで、飛行機代も旅先での宿泊費も十分に賄(まかな)える。
ヨーロッパ旅行から戻ってきたばかりの女性は嬉しそうに語る。「あっちで新しい服も買えたし、身内のみんなにお小遣いをあげる余裕まであったんですよ」。
・・・(略)・・・自分は国から一歩も出ずに、クレジットカードに海を渡ってもらうというケースもある。自分のクレジットカードを海外にいる友人に送るのだ。友人にそのクレジットカードでドルを引き出してもらって、ドルをベネズエラに送金してもらうわけだ。
「席が半分しか埋まっていない状態で飛び立つ飛行機が多いのも、そのマジックとやらのせいなんですよ」と語るのは、観光業団体連合会会長を務めるリカルド・クサンノ氏。予約をすっぽかす連中の鼻を明かすためにも、政府は、搭乗者名簿と(ボリバルとドルとの)両替に現れた人物の名簿とを照らし合わせるべきだというのがクサンノ氏の言い分だ。
情報を寄せてくれた Carl Danner に感謝。
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●Tyler Cowen, “Arbitrage, sort of”(Marginal Revolution, June 7, 2015)
一人の学生が捺印証書を作成して、正式に改名に踏み切った。ライアンエアー社が航空券の名義変更に課す「ばかげた」手数料を支払うよりも、名前を変えたほうが安くつくからというのがその理由だ。
改名したのは、アダム・アームストロング(19歳)。ガールフレンドの義父がイビサ島行きの航空券を代わりに予約してくれたのだが、その義父が航空会社に伝えた氏名は、「ウェスト・アームストロング」だった。名前を間違えて予約してしまったのだ。航空券の名義を変更するには、手数料として220ポンドかかると言われたという。
アームストロングは、リーズシティカレッジの準学士課程でデジタルマーケティングを学んでいる。イギリスでは、改名するのに費用は一切かからない。アームストロングは、無料で「ウェスト・アームストロング」に改名すると、すぐさまリバプールに向かった。「ウェスト・アームストロング」名義でパスポートを作り直すためである。手数料は103ポンド。
過去に本紙でも何度か取り上げたように、イギリス国内にあるいくつかの航空会社は、予約のちょっとした変更にも100ポンドを超える手数料を課している。
全文はこちら(Michael Rosenwald 経由で知ったネタ)。