重要な役割をもちながらも,量的緩和として知られる資産大規模購入がマクロ経済に及ぼす効果については,いまなお議論が決着していない.本コラムでは,グローバル金融危機のさなかに連銀が実施した量的緩和プログラムがマクロ経済にもたらした効果を構造的に検討してえられた知見を述べる.一般的な共通見解どおり,研究結果からは,資産購入が借り入れ条件を大幅に容易にし新規投資を促したことがうかがえる.投資の増加は生産能力の拡大につながり,それがさらに企業の限界コストを低下させた.しかしながら,インフレ〔を年率 0.25% 抑制する〕効果もあった.
[Gregor Boehl, Gavin Goy, Felix Strobel, “The Federal Reserve and quantitative easing: A boost for investment, a burden on inflation,” VoxEU, August 30, 2020]