タイラー・コーエン 「外交特権が認められていたニューヨーク市で駐車違反を犯しがちだったのは、どこの国の外交官?」(2006年7月6日)

汚職度が高い国出身の外交官ほど、反米感情が強い国出身の外交官ほど、外交特権が認められていたニューヨーク市で駐車違反を犯しがちだった。

●Tyler Cowen, “What a great paper, what a blah abstract”(Marginal Revolution, July 6, 2006)


「汚職(腐敗)」は経済発展を阻害する重要な要因の一つと考えられているが、汚職の多寡(たか)を左右する上で「法律」(フォーマルなルール)と「社会規範」(インフォーマルなルール)のどちらが重要なのかというと、よく理解されていない面が多い。本稿では、「法律」と「社会規範」のそれぞれの効果を分離するために、「社会規範」の役割だけを抜き出して調べることを可能にする自然実験の機会に目を付けた。ニューヨーク市には世界中から何千人もの外交官がやって来ているが、ニューヨーク市に駐在している外交官およびその家族には「外交特権」が認められていて、駐車違反を犯しても罰金を払わなくてもよかったのである(ただし、2002年まで)。この自然実験の機会は、それぞれの国の公務員がどれだけ腐敗しているかを同じ条件下での現実の行動に照らして浮き彫りにする指標の作成を可能にする。本稿で得られた分析結果によると、汚職への風当たりが弱い社会規範のしぶとさが見出された。(汚職がどれだけ蔓延しているかを測る)腐敗認識指数などに照らして汚職度が高い国出身の外交官ほど駐車違反を犯しがちで、ニューヨーク市に駐在している年数を重ねてもその傾向は変わらなかったのである。さらには、意思決定が「感情」に左右されることを示唆する証拠――それも、実験室の外で見つかった証拠――も得られている。聞き取り調査の結果に照らして反米感情が強い国出身の外交官ほど駐車違反を犯しがちであることが見出されたのだ。本稿で得られた一連の分析結果に照らすと、汚職の多寡を左右する上では「法律」(法律による罰則)とは別の要因が重要な役割を果たしていると言えそうである。

論文はこちら。内容は素晴らしいが、上に引用したアブストラクト(要旨)はもう少しどうにかならなかったろうかね。私なら以下のように書いたろうね。

国連本部で働くためにニューヨーク市に駐在しているクウェートの外交官は、外交特権のおかげで駐車違反をしても罰金を払わなくてもよかった期間に、平均して246回の駐車違反を犯している。その一方で、スウェーデンの外交官は、駐車違反をただの一度も犯していない。本稿では、そのような違いがどういう理由で生まれたのかを探る。

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