タイラー・コーエン 「『ワックスかける! ワックスとる!』 ~曖昧さの効用~」(2013年3月19日)

●Tyler Cowen, “Why a coach should be ambiguous”(Marginal Revolution, March 19, 2013)


Jeff のブログより。

映画『ベスト・キッド』でのミヤギ先生の教え(空手の指導法)を覚えているだろうか? 「ワックスかける! ワックスとる!」。「次は塀のペンキ塗り。アップ。ダウン。アップ。ダウン」。「鼻から息を吸って口から吐く。呼吸を忘れてはいけない」。ミヤギ先生のお言葉だ。

指導者が指導者たるゆえんは、教え子が成長するために何が必要かを知り抜いているところにある。しかしながら、指導者にとって頭の痛い問題がある。教え子の中でも早熟タイプの弟子は、(才能があるがゆえに)自分が何を教わる必要があるかをわかっていると思いがちなのだ。

ミヤギ先生が空手の基本となる手の動きの反復練習を命じていたとしたら、弟子のダニエル少年は、すぐに不平を鳴らして、別の動きを教えてくれと迫っただろう。さっさと次のステップに進ませてくれと迫っただろう。ミヤギ先生が曖昧なアドバイスに終始したのは、ダニエル少年との悶着を避けるためだったのだ。

天性の才能に恵まれたアーティストの卵であっても、基礎を学ぶ必要がある。しかしながら、基礎を学ぶためにどれだけの時間をかけるべきかについて、先生と意見が食い違うかもしれない。「これやっといて」といきなり何の説明もなしに課題を与えられたとしたら、教え子(であるアーティストの卵)がその言いつけを守るかどうかは、先生をどう評価しているかによるだろう[1] … Continue reading。その一方で、「基礎を一つずつ着実に学んでいかなければいけません。そこで、まずはこれをやってください」なんて感じで課題を与えられると、基礎を学ぶことの重要性について教え子がどう判断しているかに応じて、課題に取り組む姿勢に違いが出てくるおそれがある。

References

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1 訳注;「この先生は優れた指導者だ」と高く評価している(一目置いている)ようなら、言いつけを忠実に守る。「この先生は指導者として大したことない」と評価している(侮っている)ようなら、言いつけを守らない(あるいは、手を抜いて課題をこなす)。
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