タイラー・コーエン 「UFOの目撃例が減ってきているのはなぜ?」(2005年11月20日)

●Tyler Cowen, “Why are UFO reports declining?”(Marginal Revolution, November 20, 2005)


UFO(未確認飛行物体)を発見したりその正体を吟味したりするのに役立つテクノロジー――インターネット、電子機器、モバイル端末など――が劇的な進歩を遂げてきている一方で、それと並行するようにしてUFOの目撃例が着実に減ってきている。

宇宙人に誘拐されたという告白が世間を賑(にぎ)わすようになってから、40年以上が経過している。謎に包まれた異星人によって不運な地球人に汚らわしい人体実験が施されているらしいが、そのことを裏付けるような物的な証拠はというと、一切見つかっていない。アメリカ国内で販売されているパソコンであればどれであれ、精密な画像解析を行うことが可能だ。しかしながら、UFOの画像というのはレアな(稀有な)存在らしくて、最近は滅多にお目にかかれなくなっている。超常現象に出くわしたら、携帯電話やインスタントメッセージで大勢の仲間を呼び出して一緒に目撃することができる。しかしながら、近頃は超常現象もそんなに頻繁には起こっていないようだ。超常現象が起こってくれたら、UFOの仕業(しわざ)だって言えるだろうに。目にする機会は減っていても、やっぱりUFOは実在するんだって言えるだろうに。

テクノロジーが進歩したおかげでUFOの姿をくっきりと捉えられるようになったというのに、それと並行するようにして出没(しゅつぼつ)しなくなるというのは、どうしたわけだろう? あまりに奇妙だ。・・・いや、そんなに奇妙じゃないかもしれない。

全文はこちら [1] … Continue reading。テクノロジーが進歩したおかげで幻想に取り付かれにくくなったかというと、そういうわけじゃないと思う。UFOみたいにボロが出やすい幻想の代わりに、そう簡単には化けの皮が剥がれない(否定されにくい)幻想(あるいは、物語)に取り付かれるようになっただけなんじゃないかと思う。未来(例えば、トランスヒューマニズムの極端なバージョン)だとか、政治だとか、宗教だとかにまつわる幻想に。

自己欺瞞の欲求 [2] 訳注;真偽のほどは怪しくても、自分にとって心地よく思える考えを自分を欺いてでも信じ込もうとする欲求、くらいの意味。というのはなかなか馬鹿にできなくて、真実を突き止めようとする欲求の方が強さで勝る(まさる)とは限らない。真偽が定かでない考えを追い払うというのは、決して楽な戦いではないのだ。それに加えて、真偽が定かでない考えを追い払うのに必死になり過ぎると、逆に損(そん)してしまうこともある。

「UFO(の存在)を信じる」というのも一つの幻想で、馬鹿げたところがたくさんあるのは確かだ。しかしながら、その影響を思い返すと、比較的害の無い幻想だったと言えそうだ。政府(国家権力)を疑う目を養うことになったし [3] 訳注;「UFO(ないしは宇宙人)の存在を頑(かたく)なに認めようとしない政府なんて信用ならない!」、SF映画にお客を呼び寄せもした。公共政策への影響――(宇宙人との外交交渉を担当する)大使のポストが増えるとか?――を思い返しても、財政規律の悪化に手を貸したわけでもないのだ。

References

References
1 訳注;上の引用箇所だけだとわかりにくいかもしれないので念のために注記しておくと、UFOの目撃例が減ってきているのはなぜかというと、テクノロジーが進歩したおかげで嘘をつきにくくなった(でっち上げやごまかしが見破られやすくなった)から、というのがここで提示されている答え。
2 訳注;真偽のほどは怪しくても、自分にとって心地よく思える考えを自分を欺いてでも信じ込もうとする欲求、くらいの意味。
3 訳注;「UFO(ないしは宇宙人)の存在を頑(かたく)なに認めようとしない政府なんて信用ならない!」
Total
0
Shares

コメントを残す

Related Posts