●Alex Tabarrok, “Why Does India Have So Few Tourists?”(Marginal Revolution, March 30, 2017)
観光地として大いに有利な立場にあるのに、観光産業の規模がだいぶこじんまりとしているインド。その持てる力を発揮し切れていたら、何百億ドルにも及ぶ外貨を獲得できていたかもしれず、そのおかげで何百万もの民が貧困から救い出されていたかもしれないのだ。
2016年にインドを訪れた外国人観光客の数は、およそ900万人。同年の観光産業の外貨収入は、およそ230億ドルに上る。一見すると、立派な数字に見える。観光産業はインドの輸出産業の中でも最も規模が大きい部門の一つであり、稼いでいる外貨収入に目を向けると、アパレル産業(2014年度の外貨収入は174億ドル)や製薬産業(2014年度の外貨収入は139億ドル)のような主要産業をも凌駕している。しかしながら、その実態をもう少し注意深く検証してみると、インドの観光産業はその潜在能力を発揮し切れていないことが浮かび上がってくるのだ。
下の表は、外国人観光客の受入数の多い国を1位から10位まで順番に並べたものだ(2015年度版)。1位はフランスで、外国人観光客の年間の受入数は8450万人。2016年にインドを訪れた外国人観光客の数はおよそ900万人だから、そのおよそ10倍だ。フランス、スペイン、イタリア、ドイツ、イギリスといったヨーロッパの国々は、地理的に近いこともあって、お互いに助け合うかたちになっている。相互に観光客が行き来しているのだ。メキシコ、ロシア、トルコを訪れた外国人観光客の数は、インドのそれのおよそ3~5倍に上る。中国に関しては、6倍超だ。
インドは、外国人観光客の受入数に関してはイマイチなわけだが、観光客1人あたりの支出額ではかなりの好成績を収めている。・・・(略)・・・驚いたことに、観光客1人あたりの支出額だと、インドは中国よりも上で、米国とほとんど肩を並べているのだ(その額は2610ドル!)。外国人観光客の受入数はイマイチであるにもかかわらず、観光客1人あたりの支出額で健闘しているおかげで、観光収入総額(=観光客の受入数×観光客1人あたりの支出額)のランキングでインドは世界9位に食い込んでいる(10位はメキシコ)。インドを訪れる観光客一人ひとりは多額のお金を落としていっているわけだが、そのことがかえって観光客の数の少なさを際立たせているのだ。
インドのオンラインマガジンであるプラガティ(Pragati)に寄稿した拙記事からの引用だ。いくつかのごく簡単な改革に乗り出すだけで、インドの観光収入を今よりも何百億ドルも増やすことができる。「ごく簡単な改革」の中身 [1] … Continue readingについては、記事を読んで確認してもらいたいと思う。もう少し踏み込んだ話については、アミット・ヴァルマ(Amit Varma)と対談しているポッドキャストをチェックしていただきたいと思う。
「ごく簡単な改革」に乗り出さなくても、インドにはもっと多くの観光客がやって来てしかるべきなのは言うまでもない。目に焼き付けておくべきスポットがたくさんあるのだから。
まずは、チットガーフォート(チットガー砦)にある寺院。
次に、ウダイプール市にあるサヘリオン・キ・バーリ庭園。18世紀初頭に作られた噴水があって、重力で水が噴き出る仕掛けになっている。
最後に、アジャンター石窟群。
References
↑1 | 訳注;外国人観光客に対するビザの免除(ビザ無しでもインドに入国できるようにする)。インドで外国人観光客の数が伸び悩んでいるのは、ビザ取得の手続きが煩雑だから、というのがタバロックの考え(「インドを訪れる観光客の数が思いのほか少ないのはなぜ?」という問いへのタバロックなりの答え)。この点については、本サイトで訳出されている次の記事もあわせて参照されたい。 ●アレックス・タバロック 「観光ビザの海外旅行抑止効果」(2018年1月9日) |
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