アレックス・タバロック「学資ローンが少ないほど債務不履行率が高くなっている謎」

[Alex Tabarrok “Default Rates on Student Debt Increase with Lower Balances,” February 24, 2015]

ニューヨーク連邦準備銀行の「リバティ・ストリート・ブログ」に,驚愕のグラフが掲載されていた:

【2009年コゥホート:卒業・中退時の債務額ごとにみた債務不履行率】
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ここからわかるのは,学生ローンの債務不履行率は借入額が大きければ大きいほど小さくなるということ,言い換えれば,いちばん債務不履行になる率が高いのはいちばん借入額が小さかった学生たちだということだ.

これはぼくも予想外だけど,可能な説明はいくつかある.第一に,中退者は債務が少なくて所得も少ない.だが,債務は教育を受けた年数に比例して増加する一方で,所得はそんなに比例して伸びない.『イノベーション・ルネッサンス開始』で述べたように,2年で中退した学生たちの所得は,4年かけて卒業した学生たちの半分に満たない(卒業証書の効果だ).このため,中退した学生たちの40パーセントほどは,債務の増え方が所得の増加を上回ってしまい,それで債務不履行率が上がることになる.

所得対債務の比による説明の筋書きはありそうな話ではあるけれど,債務の少ない学生たちがこれほどまで債務不履行になっているのには驚く.「リバティ・ストリート・ブログ」の評論家レイモンドが,さらに仮説を示している:

私は大きな公立コミュニティ・カレッジで学資支援の仕事をしている.債務不履行者たちに関するデータを引き出してみたところ,60パーセントの学生が,補習コースから出発し,入学後の1学期か2学期にお金を借り入れていたのがわかった.データに含まれる人たち全員のうち,およそ80パーセントが2学期のあとまもなく学費支払いがとまっている――このため,借入額は少ないのだ.多くの人たちは,高校を卒業してそのまま大学に入った学生ではない.彼らは独立した成人だ.長年にわたって学資支援で学生たちと話してきた経験といまのことを合わせて考えて,1つの結論にたどりついた――学費支払いを中断してローンを求めている学生と面談して「それなら民間の学資ローンや他のローンもありますよ」と伝えると,99パーセントの場合に,相手の学生はこう言うのだ,「与信審査がよくないんです.」 わるい信用は,わるい学業成績と相関しているように思える.多くの学生は,学費の支払いよりも請求書の支払いを心配しているように見える.場合によっては,そうした学生は刑務所から出たてで雇ってくれるところがなかったりもする.彼らは,観察期間中に,働くか仕事をみつけるよう求められているが,就職は不可能に近い.また,債務で首が回らなくなっていて,学資ローンでどうにか時間稼ぎをしている人たちもいる.噂だが,信用がないがとにかく資金をどうにかして手に入れたいとなると,学費が安いコミュニティ・カレッジに行って,限度額まで借り入れるのだそうだ.データを見てみたら,高校卒業または一般教育修了検定合格から10年以上も経っている学生が大勢いるのに気づいた.債務不履行率を下げたければ――学費が安い大学の1学期や2学期に際だってたくさんの補修コースを履修している学生に貸し付けるのをやめることだ.

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