経済学101は主に皆様の寄付によって賄われています。温かい支援をお待ちしています

ジョン・コクラン「累進型消費税」(2017年4月26日)

John Cochrane, “A progressive VAT” (The Grumpy Economist, April 26, 2017)

VAT(ここでは消費に課税する税のことを指す)以外の税金は無し 所得税、法人税、相続税などなど一切無し- というのは経済学者にとってほぼ理想だ。ではどうやってVATを累進化できるだろう?素晴らしく、あるいはもしかしたらキチガイじみた、アイディアが思い浮かんだ。

累進型消費税

みんなVATの最高税率を払う。例えば40%としよう、これは連邦所得税の最大限界税率と同じだ。一年に渡ってお金を使い続け、領収書を提出する。これはすべて電子的に数秒で完了するとしよう。なので、例えばその一年で初めの一万ドルの消費に対しては支払済みのVATすべてが還付される。次の2万ドルの消費に対しては、支払い済みの税40ドル毎に30ドルが還付される、つまりここでの税率は10%だ。最後に、例えば消費40万ドル以降は還付無し、なので40%の最高税率を支払うことになる。

ご覧のとおり、これですべての消費を申告するインセンティブを人々に与えたことになる。そのインセンティブは、所得税や売上税に比べてVATがもともと持っていた主な利点のひとつを補完することになる。VATでは、生産ネットワークの各事業で原材料にかかるVATを支払い、販売の際にVATを請求する。それは事業者において販売時にVATを徴収する強いインセンティブになる。また顧客は徴収されたVATに対する控除を受けるために、VATを支払った証明を要求するようになる。つまり人々は税金支払いを証明するために「領収書」を要求するようにもなる。

明らかにこれがうまくいくには、すべてが電子化されている必要がある。アメリカ納税者に費用払戻しの骨折り仕事をしてもらいたくはないが、だいたいそういうことになる。売上税の申告制度があるのだから、VATの申告を追加したり売上税の申告をVATで置き換えたりするのはそう大変なことではないはずだ。

大きな違いは、売上税の場合の売主と同じように、取引毎に買主を申告しなければならないことだ。市民的リバタリアンとしては、初めはこれが致命的な問題点として私を打ちのめした。私たちは既にプライバシーも取引の匿名性も随分失ってしまっている。だが、考え直してみるとそう悪くないかもしれない。私たちはすでにすべての所得源について政府に申告しているし、E-Verify(就労者ステータスチェック)または他の移民管理制度下において政府に就労の許可を取っている。すべての買い物を申告するだけのことが、どれだけ私たちの状況を悪くするだだろうか?特に、この累進型VAT制度が所得税に取って代わったら、所得源の申告はもうしなくてよくなるのだ。それに、何を購入したかでもなく売主が誰かでもなく、支払ったVATの額だけを申告すればよいのだから。

デビットカードやクレジットカードをすでに使用しているひとの場合は、これは簡単だろう。カード会社がカード保有者各自が支払ったVATの額を歳入庁に直接申告すればいいのだ、支払いがどこで行われて買ったのは何なのかは申告する必要はない。カード会社は(購入があった)店舗がVATを払ったことを別途申告すればいい、誰に支払ったかの情報は必要ない。そういった電子的取引を使わないひとたちにとってはこれを始めるには良い時期だ。すべての国民がデビットカードや携帯電話による支払いができるよう設備を整えることをインドができるのだから、アメリカだってできるはずだ。これは社会保障制度、障害保障、その他すべての政府による支払いをより安全で保障されたものにできるし、貧しい地域の小切手現金化ビジネスの手数料を切り下げることにもなる。もし現金で取引した場合は、カードを読み取り機に通して取引を記録し税金を払う。税金が還付されるということがこの手続きをするインセンティブになるのだ。

クリエイティブな読者ならもっと良い方法を思いつくだろう。ストアバリューカード(プリペイドカードなど)やブロックチェーン技術ももちろん納税をより安全によりうまく申告できるかもしれない。

手続きが瞬間的に完了できる仕組みにできるかもしれない。店舗がVAT支払いを電子的に申告し、財務省は支払い主のデビットカード口座にVAT還付金を即時に記入するのだ。

当然だが、家や車といった金額の大きい支払いは数年に渡って繰り越すこともできる。そうすることで高消費カテゴリーに人々を入れないようにできる。

もちろん、個々人の購入の申告が必要となるのはVATを直接的に累進型にしたい場合のみである。VATの税率が一律で小切手による再分配でよいというのなら、何の申告も要らない。例えばみんな20%のVATを支払って、政府が予算から小切手を切り、ふさわしい人々の手に渡る。

だが、これだけでは十分ではなく、一律税率で可能な範囲を越えて富裕層に課税したいと仮定しよう。そしてVATを累進型にしなければならないと仮定しよう。これを達成するはどうにかして消費を記録することが必須だ。

標準的アプローチ

累進型消費税導入への標準的アプローチは所得税制を通して機能する。まずは今と同様に、課税対象から資産所得(配当やキャピタルゲイン)を除いた所得情報のすべてを集め、貯蓄の控除を認める。おおまかにいうと、401kや同種の仕組みのものの上限を撤廃したものになる。

このアプローチは筋が良くない。収入を隠すインセンティブが働いてしまうからだ。それに、課税対象の労働収入を資産収入のように見せかけるインセンティブも働いてしまう。専門職の自営業者1 は、「賃金」として給与を支払うよりは、(貯蓄として購入した自社株の)投資の大型「配当」にしてそれを自分の給与に組み込み支払いをすることができてしまう。

また本当は消費であるものをビジネス投資のように見せかけるインセンティブも働いてしまう。あのヨットはどういうわけか本当のところは企業投資だ。まぁ、自分を法人組織にして十分な数のクルーズ経費を提供し歳入庁をご機嫌にすればよいし、そうなるだろう。私の累進型VATの実施されている世界では、投資も消費と同じようにVATを払う。クルーズにもVATが課税される。もし課税されたVATの額が支払ったVATの額に足りなかったら、それは消費であって課税されたということだ。他の多くの使い古された問題も同じだ。

同様に、私の当初の考えは、上で述べたように消費を電子的に記録すること、そして高額消費には高率の課税を年末に課すことだった。しかし消費を隠すインセンティブが働いてしまうかもしれないし、それは所得を隠すより簡単なことかもしれない。納税をし還付を受けるというところが、すべてを申告することのインセンティブになるのだ。

ヨーロッパの制度はより明白ではない。フラットVAT(20%ほど)、給与税(40%ほど)、そしてその上に所得税と相続税(50%ほど)である。後者のほうで累進課税を実施しているが、所得税のもたらす害を被っている。

また、もうひとつ重要なことがある。所得を間接的に移転したりペット産業に助成金を出したりするような、消費する物品によって税率を変える(下げる)ようにという政治的圧力に応じて、VATを台無しにしないことだ。

なぜ消費税はそんなに重要なのか?

本来は高額所得を課税したり再分配したりする必要はない。再分配をしたいなら、消費を再分配すればいいのだ。もし高額所得があるがすべてをビジネスに投資して貧乏人のように生活するというのなら、好きにしていい。富はそこで投資として良いことをしている

逆に、所得が少ないからといって高額消費をすることを免除する理由はない。報道によればトランプ大統領は何十億ドルという投資の損失について課税所得控除をまったく合法的に受けることに成功し、それ以降たいして税金を払っていない。累進型VATの世界では、数々の邸宅やヘリコプターも全部課税されることになる。

アメリカ連邦税法の原罪は、所得課税であって消費課税ではないところだ。所得を課税するならば、企業も課税しなければならなくなる。そうしないと個人が所得隠しのために法人化してしまうからだ。(もし遅れて議論に参加したのなら参考までに言うが、正しい法人税はゼロだ。法人税は例え1セントであろうと、商品価格の上昇か、賃金の低下か、株主への利益の減少でまかなわれることになる。株主はこれを最も回避しやすいため、商品価格が上昇すると考えられる。もし売上税のせいで高い価格の商品を購入しているのだと理解できたら、それは法人税のためなんだということもすぐに理解できるだろう。)

所得ではなく消費に課税することで、法人税は廃止できる。非営利組織の問題は消滅する -さよならロイス・ラーナー2 、さよなら胡散臭い「チャリティー」税金逃れ。401k、526b、IRA、1031などの酷くわかりずらいのにたくさんある税控除制度も必要ない。医療貯蓄口座も要らない、預金は課税されないからだ!この酷くわかりやすいところが累進型VAT制度の一番の魅力だ。

消費税には標準的な経済学的議論もある。投資収益に課税したら、人々は単に貯蓄のうち株式を減らすのでリターンが変わらなくなる。特にキャピタルゲインを回避するために株式を売却しなくなる。

少数の高額所得を課税対象としており消費より所得のほうが数えやすかった1914年には、所得税は意味をなしていた。しかし今はそうではない。

累進型VATは可能である。何十万ページという税法の法令集は焼かれ、たったひとつのシンプルなVAT(本質的には売上税だが)に置き換わる、それを想像してみてほしい。そして累進性への障害も消滅するのだ。

獣を飢えさせろ?

VATに反対する主要な反論は、VATが効率的過ぎるというものだ。税収を上げられるので政府も大きくなる。彼らは言う、獣を飢えさせろと。

私はこれは間違いだと思う。

第一に、これはたいして成功しない。米国の政府支出は税収不足や累積債務危機の亡霊のせいで制限がかかっているとは言いがたい。

第二に、これが民主主義でどれだけちょっぴりの信頼しか示せないか考えてみてほしい。静かに、経済学者たち!もっと効率的な税制があるなんて主張しちゃダメだ、だって民主主義はいつでも所与の税制のもとに短期的なラッファー曲線の頂点で機能するのだから。もし民主主義が自治できないものだとしたら中国共産党に西洋文明の鍵を手渡してしまえばいい、我々は破滅だ。

第三に、アメリカ政府は全体(連邦および各州)で既にGDPの約40%の支出をしているのを思い出してほしい。もしすべての隠れた支出(租税経費、住宅ローン利子や健康保険、チャリティー、エネルギー控除、ビジネス上のマンデートなどの控除)を加算すると、アメリカはおそらく少なくともヨーロッパの50%にはなる。私はVATのみで他は一切なしの税制を提案している。内部助成金や予算のマンデートは見えるようにしてしまおう。もしVATが累進型になるなら、最高税率はピケティだって満足するレベルになるはずだ。これ以上のことをここから搾り出す余地はもうないと思う。

なので、逆方向から見てみようと思う。NOの場合:もし支出を削減したいなら、非常に複雑で経済成長を阻害し意欲を妨げる不可解な税金制度に苦しむだろう、最大の歪みで少しの税収しか上げられずに。累積債務危機とともに財政支出を恐怖で追い返えそうとして。YESの場合:減税をしたいなら、支出も減らす。黒字が出たら、減税をする。

どちらの意見の経済学者も政治学には素人(とても素人)だと認めよう。我々は経済学についてだけ話すのがよいだろう。VATは最も効率のよい税制で、もし望むならこうやって累進型にもできる。

すでにこれを考えたひとは誰かいるだろうか?もしいたら誰か教えてほしい。それと、もし私が考え付かなかった重大な欠陥があればそれもだ。

更新:

ボブ・ホールは、違う構造ではあるがホール・ラブッシュカ税が同じ目的を達成できる税金だと私に思い出させてくれた。

ケヴィン・ウィリアムソンは、法人税が廃止されるべきであるいくつかの理由をナショナルレビューに寄稿した素晴らしいエッセーで説明している。

ニナ・オルソンは、アメリカの税制の複雑さをウォールストリートジャーナル紙で記事にしている。税制は以下を含む:
6つの家族の続柄に関する条項、…届出状況、個人的または扶養家族免除、子ども税額控除、給付付き勤労所得税額控除、子どもまたは扶養家族費税額控除、別居配偶者規則、…少なくとも12の教育奨励貯金があり、これは保護者や学生自身がインフォームド・チョイスを行うには数が多すぎる。現在、少なくとも15の退職貯金を促進する奨励制度(IRA、roth、401kなど)がある。
もちろん、これはただの出だしにすぎない。法人税を別にしても、個人の所得税の複雑さの出だしだ。そして、
1995年には、税法において14の民事上の罰則があった。今日では、170以上だ。オルソン氏は2001年から National Taxpayer Advocate3 であるが、彼女でさえ”少なくとも”とか”以上”といった言葉で自衛しなければならないほどだ。彼女でさえ本当はどれくらいの罰則があるのかわからないに違いない。
  1. 訳注:自営業者となっている専門職者でパートナー弁護士や会計士など []
  2. 訳注:米国歳入庁の元免税組織局長、不適切な税審査があったとされるスキャンダルで公聴会に証人として召喚された []
  3. 訳注:歳入庁の独立機関である the Office of Taxpayer Advocate の職員で納税者の税金問題に対応する []

コメントを残す