Tyler Cowen “Is Christmas efficient?” (December 23, 2013 Marginal Revolution)
みんな多分知っているだろうけど、消費者向けの商品やサービスへの需要はサンクスギビングの後に大きく上昇して、季節的な景気循環の上昇局面をもたらす。主要国のほとんどでは、12月ないしその近くに大きなプレゼントイベントがある。その結果、第4四半期 [1]訳注;サンクスギビングもアメリカで11月、カナダで10月と、第4四半期にあたる。 の産出と雇用は大きく拡大し、第1四半期には不可避的な収縮がもたらされることになる。普段僕たちは季節調整済みのデータを使うけれど、季節的な景気循環は通常の景気循環と比べて小さいってわけじゃない。それについて詳しくはここを見てほしい。
でもそうした季節循環は効率的なんだろうか。実際にグリンチがクリスマスを盗もうとしている場合 [2]訳注;童話「How the Grinch Stole … Continue reading 、それはカルドア・ヒックス基準で言うところの潜在的パレート改善なのだろうか。
季節的な景気循環が非効率であるかもしれない理由としては、次のものが考えられる。
1.消費者向けの商売に従事する労働者は、労働供給の平準化、つまり12月中旬に今よりも多くの休みをとり、1月にはレイオフされないというほうを好むだろう。
2.多くのクリスマスプレゼントは強制的な購入であり、また必然的に第三者による支払いとなる。 [3]訳注;プレゼントなので、商品を手にする人と払う人が違うという趣旨。 単に「僕たちみんな気にかけてますよということを示す」等々するためだけに、経済は「本当の消費者需要」についての情報を失っているのかもしれない。
3.クリスマスによる大きな支出増加の一部を獲得するというレントシーキングを目指し、10月から11月の新製品市場に過剰に商品が投入される。例えば僕の場合、もっと1月に出版される「必読」書を増やす代わりに10月のはもう少し減らして欲しいと思っている。同じようなことは、映画やそれ以外の様々な形のエンターテイメント、例えば新製品のおもちゃなんかについても言えるだろう。
4.「流行ったり(catch on)」流行らなかったりを多くの商品が第4四半期にするわけだから、需要の季節的な集中は社会のリスク分散を損なうことで所得格差を広げる恐れがある。
需要のこうした強力な季節要因が効率的であるかもしれない理由としては、次のものが考えられる。
1.需要の強力な循環性は、それがなければ固定費用のせいでボツとなっていたかもしれない一部の新製品が市場に投入されるのを後押しするかもしれない(シュライファーの「インプリメンテーション・サイクル」の論点)。
2.需要の強力な循環性は、長期失業から一部の労働者が抜け出すのに役立つかもしれない。というのも、事実ベスト・バイ [4]訳注;米の電気製品販売業者 はこの時期にヘルプの店員を雇用しなければならないからだ。そうして雇われた労働者たちが働くことに再度慣れ、履歴書に新たな一文が増えれば、彼らの労働市場における将来経路は改善することになる。それによる利得は、四半期ごとの労働が平準化されないことによる非効率を抱え込むという損失を上回るかもしれない。(ところで、季節的な景気循環によってこうした労働者の多くが拾い上げられているということを否定するのであれば、その他ほとんどの形態の刺激策はどうなるだろうか。)
3.プレゼントという制度が消費者の購買につながり、そしてそれがイノベーションを促すのであれば、多額のお金が無駄遣いされはするものの、経済が現状維持バイアスから抜け出すのに役立つ。
4.同時期に多くの購入とマーケティングを集めることは、購買と製品のマッチングの向上をもたらす可能性がある。これは「出会いパーティー(speed dating)」にちょっと似ている。
より一般的に、クリスマスの存在が支出されるお金の総額を上昇させるのか、もしくはただ単に季節ごとの需要を波立たせるだけなのかにという議論も可能だ。僕としては支出総額の上昇はないんじゃないかと思うけれど、上昇するとしてもそれが良いかどうかについての議論もあって、これは貯蓄率が上昇すべきか下落すべきかによる。ある国における季節的な景気循環の強弱は、そうした変動への技術的順応性についての企業の事前決定に影響を与え、そしてそれによって非季節的な景気変動の大きさが左右されることにも注意してほしい。 [5] … Continue reading
みんなはどう思うだろうか。グリンチに賛成?それとも反対?あるいはマット・イグレシアスが言うように、新しく大きなプレゼントイベントを6月に作って総需要刺激を図るべきだろうか?
References
↑1 | 訳注;サンクスギビングもアメリカで11月、カナダで10月と、第4四半期にあたる。 |
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↑2 | 訳注;童話「How the Grinch Stole Christmas!(いじわるグリンチのクリスマス)」の主人公。クリスマスが嫌いで、クリスマスを盗んで中止させようとする。 |
↑3 | 訳注;プレゼントなので、商品を手にする人と払う人が違うという趣旨。 |
↑4 | 訳注;米の電気製品販売業者 |
↑5 | 季節変動が大きい場合、企業はそれに順応できるようにより多くの過剰供給能力を購入するが、そうすると今度は閑散期に非季節的なショックが起きた場合の影響が大きくなるという趣旨。なお、原文のリンク先では無料で読めるのは論文のサマリーだけのため、リンクの差し替えを行った。 |