Tyler Cowen “Modeling Vladimir Putin“(Marginal Revolution, March 19, 2014)
選択肢はいくつかある。
- プーチンは頭のおかしい短気なやつで、手続的合理性 [1] … Continue reading すらない。メルケルはこれまでの電話会談のなかの一つで、そうした印象を受けている。
- プーチンはミーゼスとロビンスが言う意味での方法上の手段・目的合理性を持っており [2]訳注;(客観的に合理的とは限らない)目的を達成するために手段を選ぶ合理性がある。 、つまり彼は自分が行うことについて何らかの理由を持っている。彼は単に悪だくみ、すなわちロシアの国力の拡大とともに自らの権力の拡大をねらっている。
- プーチンは手続き的な意味において完全に合理的で、すなわち彼は非常に良く計算し、自らの悪だくみを効果的に追及する。2.だと彼はオーストリアンとなるが、3.だと新古典派及びルーカシアン [3]訳注;ロバート・ルーカス的 ともなる。彼は国際地政学の根底に位置するモデルの真の構造を知っている。
- プーチンが生きているのは、力というものが手法、感情その他諸々の計算であり、伝統的な手段・目的の関係を定義するのが非常に難しい世界である。力とは非常に多くの場合自分のために手段を行使することであり、手段と目的はしたがって混ざり合っている。力が実際に手段と目的の両方として消費される場合には、私たちの合理的選択の構図は、時に私たちを間違った方向に導き、的外れの非合理性を目撃させられることになる。プーチンや彼の取り巻きにとって力とはどのような感情を呼び覚ますものなのかを、私たち民草が理解するのは難しい。彼らはKGB時代を過ごし、自らの世界が崩壊するのを目撃し、最高権力の座へと昇るために弾圧を行ってきた。私たちが枕を尻に敷いてスポーツテレビを見てる間にだ。
ここで元CIA長官が、プーチンはゼロサム的な考えを持っていると主張しているが、私はこれを自分のメインの思考枠組としようとは思わない。ここでアレクサンダー・J・モティルは、プーチンが合理的かどうかを検討している(フォーリン・アフェア紙だが、非購読者もアクセス可能であることを祈る [4]訳注;できます。 )。ここでは、プーチンに対するホワイトハウス内の様々な見解について、興味深く有用な議論がある。ここにあるプーチンとの数時間にわたる会食のレポートでは、彼は高慢で、他者の支配に憤慨し、ほとんど笑わないという。ここでは、エリック・ポズナーがプーチンの法律面での抜け目のなさを書いている。
私の見方は2.と4.の混合だ。彼は合理的であるが、意思決定は完全からは程遠く、私たちが感情として理解するのが難しい計算を行っている。彼の憤りは彼に権力をもたらすとともに事前コミットメントの技術をもたらしたが、ロシアによるユーラシア帝国などというものは依然としてどうしようもない考えだと示唆する国際地政学における真のルーカスモデルを彼に見えなくしてしまった。
プーチンはまた偏執的であるが、合理的に偏執的なのだ。私たちはNATOによって彼を包囲した。中国は年を追うごとにより強力になっている。多くのロシア人が彼を殺すか、放逐するか、あるいは牢獄に入れようとしている。
プーチンの合理性についての仮定をすると、予測を行うことができる。1.だとすると、大戦争を心配しなければならない。2.と4.の混合という立場から、私は大規模な惨事が起こるとは考えてはいないが、彼が止まるとも思わない。増大しつつある中国の存在感へ対応するとともに、(ある程度まで)ソビエト連邦の崩壊を逆転させるために、集権的で感情を揺さぶるような新ロシア/ソビエト帝国を建国することを目的として、西側の注意をよそに向けつつ、資源豊富な近隣諸国を従属国家へと変えるのではないかと思っている。たとえ彼が世界の理の真のモデルをきちんと理解していないとしても、ヨーロッパは弱く [5]訳注;リンク先は画像なので、是非参照してほしい。 、アメリカが切ることのできる良い手札はほとんどないことを彼はよく分かっている。
本件については現在もさらなる検討中。。。
追記:読者諸兄が、ロシア人は一般的にどうであるかという理論についてどのようなものを抱いているにしても、ロシアの赤ちゃんが指揮をしているこの一分間のビデオを見て、もう一度考えてみてもらいたい。