タイラー・コーエン 「『意図せざる結果』コレクション」(2008年2月12日、2010年9月30日、2013年3月9日)

●Tyler Cowen, “Department of Unintended Consequences, a continuing series”(Marginal Revolution, February 12, 2008)/“Department of Unintended Consequences?”(Marginal Revolution, September 30, 2010)/“Dept. of unintended consequences”(Marginal Revolution, March 9, 2013)


厳密な実証分析を行ったところ、アメリカ国内で施行された禁煙法(バーでの喫煙を禁止する法律)は、飲酒運転が原因の交通死亡事故を増やす効果を持ったことが判明したという。バーでの喫煙が禁止されたら、タバコを吸いながらお酒を飲みたいと思う人はバーには立ち寄らなくなるから、酒気帯び運転で(バーから自宅までの)帰路に就く人の総数も減るのではないかと思われるかもしれない。しかしながら、問題は次の点にある。禁煙法は、アメリカ全土のあらゆる地域で施行されているわけではなく、禁煙法が施行されている地域とそうではない地域が隣接しているケースがあるのだ(それに加えて、法律の目をかいくぐってお客に喫煙を許可するバーも存在する)。禁煙法が施行されている地域に住んでいたとしても、禁煙法が施行されていない近隣地域のバー(ないしは、違法営業を行っているバー)まで足を運べば、タバコを吸いながらお酒を飲むことができるのだ。しかしながら、そのための移動手段として車が使われれば、(バーから自宅に戻るために)酔っ払った状態で車を運転する距離も長くなることになる。タバコを吸う層とお酒を嗜む層はかなり重なっている(タバコもお酒もどちらも嗜む人の数は相当数に上る)が、ということは、バーで喫煙しながらお酒を飲めるのであれば(禁煙法が施行されていない近隣地域まで)車で遠出しても構わないと考える人の潜在的な数も相当数に上ることになる。論文の著者らの推計結果によると、禁煙法が施行されたことで、飲酒運転を原因とする交通死亡事故の件数が典型的な郡において年あたりおよそ13%(年あたりおよそ2.5件)増えたというのだ。

全文はこちらだが、他にもいくつか興味深い研究が紹介されている。一読の価値ありだ。ちなみに、引用文中で紹介されている論文は、近々Journal of Public Economics誌に掲載される予定 [1]訳注;掲載済み。次の論文がそれ。 ●Scott Adams and Chad Cotti, “Drunk driving after the passage of smoking bans in bars”(Journal of Public Economics, Volume 92, Issues 5–6, … Continue readingとのこと。以上の推計結果は、かなり信頼が置けるようだ。

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交通事故損害データ研究所(Highway Loss Data Institute;HLDI)の研究員たちは、車の運転中に(携帯電話等を操作しての)テキストメッセージのやり取りを禁止する法律が施行される前後で(交通事故による)損害賠償請求の件数にどんな変化が見られるかを検証した。検証の対象となった地域は、カリフォルニア州、ルイジアナ州、ミネソタ州、ワシントン州の計4つの州だが、そのうち3つの州では法律の施行後に(損害賠償請求のデータから逆算できる)交通事故の発生件数が増えていることがわかったという。警察の目を逃れるために、ドライバーたちが携帯電話を低い位置で操作するようになったのがその原因ではないかという。携帯電話を操作する位置が低いと、テキストメッセージのやり取りをするたびに前方から大きく目を逸らさないといけなくて、脇見運転の時間も長くなってしまう。

全文はこちら。ところで、引用文中で紹介されている研究では、実証分析を行うにあたってどれをコントロール変数に選んだんだろうね? タイムトレンドの問題はどう処理したんだろうね?

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・・・(略)・・・付近の住民と役所の役人が協力して知恵を出し合い、性犯罪の前科を持つ人物を近隣から立ち退かせるための妙案の一つを思い付いた。ミニ公園を造成するというのがそれだ。

カリフォルニア州の法律では、性犯罪の前歴者が学校や公園の周囲2000フィート(およそ600メートル)以内に居住することが禁じられているが、ミニ公園の造成に乗り出しているのは(カリフォルニア州の)ロサンゼルスに住む親たちだけに限られない。マイアミのような大都市から(オクラホマ州にある)サパルパのような小さな町に至るまでのあちこちの地域で、性犯罪者を追い払うために、ポケットパーク――あまりに狭くて、ブランコを置くスペースさえ見つからないケースもある――の建設が続々と進められているのだ。ヒューストンで遊び場の設計に従事している会社の一つは、地域の管理組合に向けて、性犯罪者を遠ざける術として遊び場を作ってみてはいかがでしょうと売り込んでいる。

全文はこちら。性犯罪の前歴者たちは、ミニ公園があちこちに造成されたおかげで住む場所(法的に居住するのが認められているスペース)を見つけ出すのが難しくなっていて、公園の少ない地域に固まって暮らすようになっているらしい。

References

References
1 訳注;掲載済み。次の論文がそれ。 ●Scott Adams and Chad Cotti, “Drunk driving after the passage of smoking bans in bars”(Journal of Public Economics, Volume 92, Issues 5–6, June 2008, pp.1288–1305)
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