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タイラー・コーエン 「トーマス・シェリングとスタンリー・キューブリック」(2005年10月17日)/「『Shuga』 ~行動経済学者、ドラマの制作に挑む~」(2015年1月17日)

●Tyler Cowen, “Schelling and Kubrick”(Marginal Revolution, October 17, 2005)


スクープだ。

〔ピーター・ジョージの小説『赤い警報』(邦題『破滅への二時間』)を評したシェリングの論文 “Meteors, Mischief and War”はロンドンで出版されている日曜紙のオブザーバー紙にも掲載される運びとなった〕。オブザーバー紙に掲載されたその記事は映画製作のためにイギリスに滞在していたスタンリー・キューブリック監督の目にも留まるところとなり、キューブリック監督は早速ピーター・ジョージに連絡を取った。『赤い警報』をもとにして映画の脚本を書いてくれないかと依頼するためである。

それからしばらくしてキューブリック監督とピーター・ジョージのタッグはシェリングと面会する機会を持つことになる。その会合には核戦略の専門家であるモートン・ハルペリンとウィリアム・カウフマンも同席することになり、『赤い警報』が抱える「厄介な事情」を切り抜ける術をめぐって昼過ぎから日が暮れるまでじっくりと話し合われることになった。「厄介な事情」というのはこういうことだ。『赤い警報』が書かれたのは1958年のことだが、それ以降に大陸間弾道ミサイルの開発が進んだのである。爆撃機に核兵器を搭載して敵国を襲撃するという『赤い警報』のシナリオが(大陸間弾道ミサイルが核攻撃を行う際の主力として想定されるようになっていた)現実と合わなくなっていたのである。

シェリングは当時のことを思い出して次のように語っている。「(『赤い警報』に描かれているような)忌まわしい戦争が開始されるところまで無理なく話を持っていくにはどうしたらいいだろうとみんなで頭を捻りに捻ったものです。空軍のどこかに頭のネジが飛んでいる異常人物がいないことには戦争が始まるところまで漕ぎ着けることはできない。最終的にそういう結論に至りました。私たちの話を聞いていたキューブリック監督とピーター・ジョージの二人も『悪夢コメディ』(nightmare comedy)というかたちでいくしかないか、と観念したようです」。

シェリングは「真面目な」作品が出来上がることを願っていたようだ。曰く、「『赤い警報』は真剣そのものな作品だったんです。滑稽なところは一切なかったんです」。とは言え、シェリングも映画好きな世代に属する一人。最終的に出来上がった作品(1964年に公開された『博士の異常な愛情』)にはがっかりさせられることもなく楽しく鑑賞できたということだ。

シェリングは語る。「ブラックコメディに仕上げざるを得なくさせてしまった点についてはちょっぴり申し訳なく思っています。でも、そういうかたちにならざるを得なかったというのは真相をうまく捉えているのかもしれません」。

全文はこちらだ。この情報を教えてくれたPaul Jeanneに感謝する。他に何もすることがないようであれば(暇なようなら)、ノーベル賞の受賞対象となった研究の中で映画のネタになるような例が他にないか想像を逞(たくま)しくしてみるのもいいだろう。

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●Tyler Cowen, “When foundations and behavioral economists write soap operas”(Marginal Revolution, January 17, 2015)


ブレンダン・グリーリーがスクープを報じている

ルピタ・ニョンゴ(Lupita Nyong’o)は映画『12 Years a Slave』(邦題『それでも夜は明ける』)での演技が評価されて2014年にアカデミー賞助演女優賞を受賞することになったが、過去には故郷のケニアで放映されたテレビドラマシリーズの『Shuga』にも二シーズンにわたって出演している。『Shuga』(シーズン1&シーズン2はケニアのナイロビが舞台、シーズン3以降はナイジェリアのラゴスが舞台)は若くて魅力溢れる登場人物たちの間で繰り広げられる性的な関係が真正面から描かれているドラマだ。人気も高くて、主にアフリカで暮らす5億人を視聴層とする放送チャンネルで放映されている。

『Shuga』はMTV社の「生き延びよう」基金によって制作されているが、その基金の事務局長を務めるジョージア・アーノルド氏は次のように語る。「『Shuga』はアフリカ版の『ゴシップガール』と言えるでしょうね。より正確には、『セックス』と『健康』にまつわるメッセージが込められた『ゴシップガール』ということになるでしょうね」。『Shuga』には二つのメッセージが込められているという。安全なセックスの推進、そしてHIVにまつわるタブーの払拭がそれだ。『Shuga』は営利的なプロジェクトではなく、ビル&メリンダ・ゲイツ財団をはじめとした慈善団体による出資で制作されている。現在はシーズン4に突入しているが、最近になって制作陣に新たなメンバーが加わった。そのメンバーというのはイタリアのボッコーニ大学の教授で行動経済学と開発経済学が専門のエリアンナ・ラ・フェラーラ(Eliana La Ferrara)である。とは言え、脚本を書く能力が買われてお声がかかったというわけではない。『Shuga』に込められたメッセージを単なるお題目に終わらせたくない。アフリカの地に変化を起こしたい(メッセージに沿うような方向に現実を変えたい)。そのための確たる後ろ盾となってもらいたい。ドラマの制作陣はそのような期待を込めてラ・フェラーラに声をかけたのである。

件の記事では他にも興味深い話題がたくさん盛り込まれている。是非とも全文に目を通されたい。


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